元陸上自衛官のレトロ軍曹です。那覇市の陸上自衛官(22歳男性)が上司4人からパワハラを受けて退職させられたとして、国に200万円の損害賠償を求めていた裁判で、長崎地裁は100万円の支払いを命じたそうです。
かつてパワハラ(と呼ばれても何らおかしくない多々の出来事)を自衛隊で嫌と言うほど見てきた私にとって、これは非常に良い判例が出たんじゃないかと思っています。
最近は元陸上自衛官として「え?今の自衛隊ってこんなことで処罰されんの?」という驚きの事件が山ほどあります(女性の容姿を馬鹿にした隊員を叩いた上官が処分されたとか)が、実際にこうやって問題になるほど大きな声を上げられる被害者は少ないのが現状です。
とりあえず今回の判例では、本当に我慢できないような状況であれば、後輩隊員だからと言ってそれを我慢する必要はないということが認められたと言ってもいいのでは?今回はこのパワハラに対する事例について、備忘録のようなカタチでまとめておきたいと思います。
陸上自衛隊那覇駐屯地のパワハラ事件(裁判)
今回パワハラを受けたとして国(勤め先の自衛隊?)を訴えた男性は22歳で、高校卒業後の2015年4月に陸上自衛隊へ入隊し、2017年3月に退職したそうです。一般曹候補生として入って2年やって陸曹試験を受けずに辞めたのか、あるいは任期制隊員として入隊して1任期を勤め上げたのかは不明ですが、まぁ何とか2年という節目まではやりきったという感じでした。
パワハラをしてきたとされる人物に関しての情報は明かされておらず、恐らく上官にあたる隊員と思われる「4人」とのこと。もしかしたら同期隊員かもしれないですけど…。パワハラの内容としては「使えない」「早く辞めろや」と暴言を吐かれたり、顔を平手打ちされたりしたらしいです。
いずれにしてもそこまで詳しく掘り下げた記事は無く(あったとしても簡単に見つけられず)、物凄く端的に言うと「パワハラ被害を受けて自衛隊を泣く泣く退職した元陸上自衛官の男性が「パワハラされてやめることになったから200万よこせ!」という裁判を起こし、その主張が認められて100万円を手に入れた」という事例です。
今回のパワハラ事件に関して思ったこと
4対1という残酷な現実
ハッキリ言って、この訴えた側の男性に非が全く無かったのかどうかという部分については一切言及されていないので何とも言い難いのですが、とりあえず4対1ってダサイですよね。
私が見てきた限りでも、1対1で特定の人物を攻撃するということはほとんど無く、攻撃する側が意識的になのか無意識的になのかは分かりませんが、少しずつ味方を増やし、最終的にはその周りの人間も「あ、こいつはイジメても良い奴なんだな」と思い込んでしまうという空気感があったように思います。
例えば私の経験から言えば「とある先輩隊員が1人の隊員Aに対して攻撃的な意識を持つ→直接口で指導するものの改善しない→軽く手を出すも改善しない→連帯責任と称して同期を巻き込んで罰を与える→同期隊員もその隊員Aに対して反感を持ち、仲違いが起きる」というような感じのことがありました。
この私の体験したケースで言えば、隊員Aが注意をされても改善しなかったっていう根本的な部分があるので、今回の那覇駐屯地のそれとは事情が変わってくるかもしれませんが、いずれにしても「いじめに近いパワハラをする側は1人ではやらない」という1つの例です。
自衛隊では割と良くある連帯責任を上手く使ったマインドコントロールというか…。不思議なのは、誰一人として「連帯責任という無茶苦茶なルールを言い出してきた先輩隊員に対して反感を持たない」という部分ですね。
もちろん気の知れた同期がそういうことになれば、連帯責任とか無茶苦茶なことを言い出してきた先輩隊員に対して反感を持つ可能性もありますが、基本的にはその先輩隊員も「孤立している隊員を狙う」という傾向にあるんじゃないかと思いました。
「使えない」という言葉を使う奴こそ使えない隊員である
自衛隊全体としては「人員は宝だ」という考えを持っていて、身体に負荷を与えるキツイ訓練をする場合においても「怪我のないように」ということはしっかりと考えられている場面が多いです。演習場の整備ということで、伐採機や鎌やハサミを使用するという場合はこまめに休憩を取ったりしますし、具合が悪いという隊員が出れば手厚い介抱をすることがほとんどだったと記憶しています。
これらを見ていると「まさに人員は宝」という感じがするのですが、残念ながら隊の規模が小さくなってくると、その中で「使える・使えない」ということを言い出す奴が出てくるんです。私は通信部隊だったのですが、通信所と呼ばれる場所の点検に2人で向かう時、先輩隊員にも「A陸士と一緒に行くのはいいけど、B陸士は使えないから嫌だ」ということが多々ありました。このくらいのことは一般の会社でもあるような気がしますが…。
ただ私がずっと思っていたのは、その隊員が動けるか動けないかという部分を左右する要素の1つに「指示を出す人間の力量」もあると思うんです。やっぱ何をやっても頭ごなしに怒る先輩隊員の前だと萎縮してしまう後輩隊員も多いですし、人に対して「使えない」という言葉を発する人は、人と何か作業することが上手じゃない人が多かったように思います。
本当に使えない奴ならクビにできるという制度を作るのはダメ?
ここには賛否あるかと思うのですが、私は「時間を守らない/周りと一緒に行動できない」とか隊員としての素養に著しく欠けている隊員については、クビにできる権限を持てばいいんじゃないかと思っています。
というのも、自衛隊は国家公務員なので「こいつは気に入らないからクビ」ということが出来ません。だからこそ、一般の会社であれば「あなたは会社の利益にならないからクビ」となってしまうような人でも、残ることが可能になっているという部分もあります。
そうなってくると、一部のおかしい隊員が「俺は隊の不利益を取り除くために、こいつをやめさせる」という、訳の分からない間違った正義感をかざすことが出てきますし、そもそも周りと極端に歩調を合わせられない隊員には「怒られたから直そう!」とは思わない人間が多いです。隊には「こいつはあまりにも…」という隊員は正攻法で辞めさせられる権限を与えて、辞めさせられたことに対して不当だと感じた隊員は、その時点で裁判をすればいいのでは?
もちろん個人的な感情で不当に処分したということが明らかになったら、その権限を使って隊員を辞めさせようとした側が刑務隊あたりにしょっ引かれればいい。これなら、辞めさせられる側の隊員も無駄に暴力やらパワハラを受ける可能性は低くなります。…ダメですかね?いずれにしても私が見てきた自衛隊の世界には、頭がおかしいと感じた隊員が多かったことは事実です。
最後に
今回の件を受けて、個人的には「自衛隊の中では日常的に行われていることの一部が、たまたま表面化しただけ」だと思っていて、中には「俺も訴えたら勝てるんじゃね?」と思っている隊員も山ほどいるんじゃないかと思っています。
そして「こいつは自衛隊にいるべきじゃない」と思う隊員も少なくありませんが、そういう隊員だったらパワハラで追い詰めて良いという道理もありません。
人にそういうことをする隊員の多くは、そいつも淘汰されるべきだったというケースが多いような気もします。とりあえず泣き寝入りなんかはせず、納得がいかないなら勇気を出して一矢報いるくらいの感じでワンチャン狙ってみては?