階級社会と言われるが実際は〇〇|階級だけでは語れない自衛隊の序列

 

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。

自衛隊は階級社会と言われており、昇進スピードにはその人の素養が大きく関係します。

いわゆる「優秀な人ほど階級が上がっていくのが早い」と言えるのですが、人によっては「ある段階で色んな先輩隊員をごぼう抜きにする人」も出てくるでしょう。

 

「階級社会と言われるのであれば、階級が高い方が偉いのでは?」と思いがちですが、そんなに簡単にいかないのが自衛隊の上下関係です。

今回は「階級だけでは語れない自衛隊の序列」について、サクッとご紹介します。

 

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基本は「何年自衛隊でご飯を食べてきたか」

 

基本的には1日でも先に入隊している人が先輩であり、そこの上下関係をひっくり返すことは難しいです。

優秀な後輩隊員なら先輩隊員の階級を抜くことができますが、追い越したとしても多くの場合で何も変わりません。

 

イメージ的にはお笑いの世界というか、吉本興業の上下関係に近いような気がします(よしもとクリエイティブ・エージェンシーに入社したことがないので、あくまで予想ですが)。

例え「売れていない先輩であっても、先輩は先輩」という考えが強いのと同じように、自衛隊においても「昇進するのが遅くても、先輩は先輩」です。

 

ただ「後輩とご飯に行くときは先輩がお金を出す」という文化はそこまで浸透していないので、後輩であることの旨みは芸人さんよりも少ないかも。

人によっては出してくれる先輩もいますが、私の経験上は飲み会に連れていかれて先輩に対する気遣いを要求された挙句、ワリカンであることがほとんどでした。
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上下関係がひっくり返る例外について

幹部になる

 

陸上自衛隊を例に書きますが自衛隊には大きな分かれ道が2つあって、1つは「陸曹と陸士の分かれ道」で、もう1つが「一般隊員と幹部の分かれ道」です。

幹部になるには防衛大学を卒業するという道の他に、一般隊員として自衛隊入隊後に幹部候補生試験を受けるというものがあります。

陸上自衛隊の階級の話|幹部になりたい?昇進したい?

 

基本的に幹部は小隊長以上になるので、古株の一般隊員が表立って幹部をコキ使ったりということはありません。「隊長、コーヒー淹れて!」というフレーズは聞いたことがないですね。

新たに就任した小隊長が明らかに年下だったからと言って「入隊何年ですか?」という質問をする人も恐らくいないでしょう。このあたりは階級社会と言えると思います。

 

転勤の際にリセットされるケースがある

 

ひっくり返るというわけではありませんが、転勤をした時の境遇によっては「この人は先輩なんだろうか、後輩なんだろうか」という微妙な空気感の中、それをハッキリさせることなくそのまま進んで行くケースもあります。

転勤先にかつての同期がいるという場合は、その人を基準に自分も周りも上下関係を探りながら馴染んでいくことになるでしょう。

 

人によっては「何期?」ということをストレートに聞いてくる人もいますし、大抵は「最初は敬語で接し、明らかに後輩だと確信したらタメ口に変わる」というパターンが多かったです。

これは「1日でも早く入隊していたら、その人は先輩である」という洗脳が根付いていることも関係していると思いますが、後輩に敬語を使うとそれを良く思わない先輩もいるので、若いうちは苦労する人も少なくないと思います。

 

年齢を重ねていくと緩くなっていく

 

やはり若い時ほど上下関係の面倒なノイズは多いです。逆に言えば、定年間近にもなって『俺の方が1年入隊が早い!』というような人は見たことがありません。

私が陸上自衛隊に在籍していた頃は、定年が確か55歳くらいでしたが、50歳を超えた人はみんなタメ口で友達同士みたいな感じだった記憶があります。

 

若い頃は先輩後輩に過剰なまでにうるさい人でも、20代後半にもなれば入隊同期の他に陸曹教育課程(士から曹になるための教育)の同期なども出てきて、たかだか1年2年の先輩後輩に踊らされるのが面倒という考え方になる人も多いのではないかと思いますね。

 

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人によって基準が明確じゃないのが面倒

 

私は同期でも年上の人には敬語を使っていましたが、度々先輩から「同期なんだからタメ口でいいだろ」と言われてきました。

というより私の場合は、先輩でも後輩でも基本的には「ですます調」で喋って、仲良くなりたいと考えている同期と後輩にだけタメ口を使っていたので、それが原因で先輩に呼び出されたこともあります。

 

地元だと「中学や高校の先輩だけど、自衛隊では後輩」などのややこしい問題も発生しますし、自衛隊には「1回自衛隊を辞めたけど、また再入隊する人」なんかもいるので、この場合だとかつての先輩が後輩になるという、かなり複雑な上下関係になるでしょう。

ちなみにお笑い界だと極楽とんぼの山本さんを見ている限り、1度辞めていても先輩は先輩という風潮が強いような気がしますが、自衛隊の場合はリセットです。

 

あとは自衛隊生徒という「中学校卒業後に入る自衛隊兼高校のような場所」からステップアップしてきた場合なんかだと、自衛隊生徒〇〇期というのが大きく影響するようなのですが、生徒には幹部に昇進する人も多く、小隊長にとっての生徒時代の後輩が中隊長といった複雑な上下関係も出てきます。

中隊長は「後輩だけど立場は遥かに上だし、他の隊員に示しがつかなくなる」という意味合いで、先輩かのような立場で接するのに対し、小隊長も「相手が上の立場は百も承知で、でも後輩は後輩」という感じで接していたのを見ました。

 

これに対して私の周りでは「小隊長が大人げない」という意見が大多数でしたので、一部例外はありますが、自衛隊の先輩・後輩がひっくり返ることも無くはないと言えそうです。

ただその基準は人によって違うので、年をとってから入隊した場合なんかだと若いうちは苦労するかもしれません。

自衛隊生活で最も屈辱的な経験|年下の先輩に横暴な振る舞いをされた

 

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最後に

私は同期よりも2年遅れで入隊したので、最初の頃は年下の先輩という存在が好きじゃありませんでしたし、かつての同級生が先輩だったので少しやりづらく感じた部分がありました。

しかし徐々に慣れていき、実際に辞める頃にはこのあたりのしがらみに関しての不満はほとんど無かったので、大したことはないような気もします。

 

もし大学卒業後に一般隊員として入隊する場合、同期と比べて最短でも4年遅れという事になりますが、このあたりが割り切れないとストレスを感じてしまうでしょう。

1年早く生まれたからと言って偉いわけではありませんが、自衛隊には「1年早く入っただけでそんなに偉いのか?」という振る舞いをする人が本当に多かったので、それが年下だと尚更ストレスに感じてしまうかも。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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