元陸上自衛官のレトロ軍曹です。
これから陸上自衛隊に入隊しようと考えている人の中には「自衛隊で一生懸命頑張って昇進したい!」と考えている人もいるかと思います。
一応、陸上自衛隊では「入隊してからどれくらい頑張るか」が割と考慮されていて、本人の素養とやる気次第では、それなりの地位まで行ける可能性があります(あくまで可能性ね)。
今回は「陸上自衛隊の階級の話」をするので、気になる方はぜひ覗いていってください。
陸上自衛隊の階級の話
陸上自衛隊の階級一覧はこれだ!
陸上自衛隊には俗に言う「一般コースとエリートコース」があります。エリートコースにも2種類あって、防衛大を卒業するパターンと中卒で入隊する(自衛隊の高校に通う)パターンです。
これを読んでいる多くの人は一般コースになるかと思いますが、私も一般コースで入隊しました。そしてエリートと言うと幹部をイメージする人も少なくないと思います。実は一般コースで入隊しても幹部の道に進む方法はちゃんと用意されているので、昇進したいという人はご安心ください。
以下では、それぞれのコースについて簡単にご説明します。
一般コース(普通の高校・大学を出て一般隊員として入隊)
士として入隊し、曹を目指す
一般コースでは2等陸士という階級からスタートします。勤続年数で1等陸士、陸士長と昇進していき、陸士長になると「陸曹候補生試験」の受験資格を得ることができます。
これに合格すると陸曹教育課程という教育隊に進み、3ヶ月の地獄を耐え抜いた後で3等陸曹に昇進です。私も自衛隊時代に陸曹教育課程を経験しましたが、これはマジで控えめに言っても地獄でした。
私が陸曹教育課程に行ったのはもう10年以上前の話になりますが、たぶん人生の中で1番辛かった出来事じゃないかと思っています。
曹として現場で活躍するか、幹部として隊員をまとめる立場に進むか
3等陸曹→2等陸曹→1等陸曹…は、基本的には勤続年数などに応じて少しずつ昇進していくという感じです。陸曹教育課程で優秀な成績を収めていれば3等陸曹から2等陸曹までの期間が短いので、その分昇進スピードは速くなると言えるでしょう。
そして陸曹長、準陸尉までが一般隊員の限界値というイメージです(あくまでイメージね)。3等陸尉からは「幹部」という立場になり、一般隊員とは全く異なる存在になります。
2等陸士から2等陸佐まで行った人がいるらしいという噂を聞いたことがありますが、こんなものは「1枚だけ買った宝くじで1等が当たった」くらいの参考にならない例だと思ってください。あくまで平均として見れば、18歳で陸上自衛隊に2等陸士として入隊し、退職する53歳頃には1等陸曹、陸曹長、準陸尉という感じでしょうか。
ちなみに3等陸曹まで行った後であれば、幹部候補生試験を受けて陸曹長(後に3等陸尉)にジャンプするという裏コースもあります。これは本人の希望というパターンもあれば、部隊から頼まれて受験するというパターンもあり一概には言えないです。
エリートコース(防衛大学校卒業、高等工科学校卒業)
エリートコースには防衛大学を卒業してから入隊するパターンと、中卒で高等工科学校を経て入隊するパターンがあります。
防衛大学卒業生はスーパーマンが多い
陸上は約9ヶ月の幹部候補生学校での教育訓練と約3ヶ月の普通科隊付教育を経て、防衛大学校卒業後約1年で幹部自衛官(3等陸尉)に任命されます。
防衛大学卒業後の進路
まず防衛大学の方は卒業した時点で陸曹長です。そしてその後で幹部候補生としての教育を受けた後、3等陸尉になります。一般隊員でも30手前で幹部候補生試験に合格して幹部になるって人は見るんですが、防衛大を卒業している人は20代前半~半ばで幹部なのですごく若いです。
私は幹部になりたいともなれるとも思ったことが無かったので、あまりこの辺は詳しくないのですが、基本的に二等陸佐以上になると「もう完全に住む世界が違う」というイメージがあります。
私が所属していた部隊では小隊長が3等陸尉や2等陸尉、中隊長が3等陸佐、大隊長が2等陸佐という感じでした。その辺の道を歩いている2等陸佐以上の人を見かけることは、日常的にほぼ無かったです。
そして2等陸佐以上になりたいと思ったら防衛大を卒業するだけではなく、防衛大を優秀な成績で卒業することが条件なのかなぁと思いますね。陸将になろうと思ったら防衛大学をトップで卒業して、その後も全てストレートで行かないと厳しいような気がします(遠い話過ぎて詳しくは知りません)。
高等工科学校卒業(自衛隊生徒)もまた別の種類のエリート
そして中学校を卒業してすぐに自衛隊の高校(高等工科学校)に通うコースもあります。ここに通うと卒業時点で陸士長、部隊配属されてちょっとしたら3等陸曹です。
幹部になりたい人はここから幹部候補生試験を受けますし、特に昇進したいという気持ちがなければそのままの隊員もいます。ただし高校卒業してすぐに入隊した同期がまだ2等陸士とか1等陸士の頃に、既に3等陸曹になるので、防衛大じゃなくても相当なエリートです。
私の周りに限って言えばですが、生徒出身者は色んなタイプの人間がいるものの「身体能力は総じて高い」というイメージがあります。普通の人間なら高校卒業後の進路だってやりたいことが見えてないケースが多いのに、中学校卒業の時点で自衛隊の道を選択するっていうのは凄いことだと思います。
どの区分からも幹部を目指すことは可能
一般隊員と幹部は同じ自衛隊員でも役割が違う
一般コースから入隊した場合は、相当頑張らないと3等陸佐以上になるのは無理ゲーだと思います。入隊した時点で既に本人にやる気と素養があることが大前提で、そのレベルで初めて実現するかどうかくらいの感じじゃないかと。
そもそも幹部になりたいと思うかどうかという部分で、その本人の性格なんかの影響を受けるような気がしました。自衛隊の場合は二世隊員が多く、親が幹部だと子も幹部を目指すっていうケースが割と多いですが、幹部になることにメリットを見出せなければ難しいと言えるでしょう。
一般隊員と幹部って役割が大きく違うので、まったく別物とまでは言わないまでも「一般の会社の昇進とは全然意味が違う」ということは覚えておいてください。
一般隊員が幹部候補生を目指すパターンの裏側
私が陸上自衛隊に在籍していた頃は、各小隊に「幹部候補生試験を受けてみないか?」という通達が来て、誰も立候補者がいなければ生贄のような感じで誰かしらが受験させられていました。
もちろん頑張らないと受からないですし、なりたくないからと言って手を抜いている人はいなかったような気がします。いずれにしても「幹部になるんだ」という確固たる意志が必要不可欠です。
陸上自衛隊の階級の話 まとめ
- 自衛隊のエリートは「防衛大学校」か「高等工科学校」
- 一般隊員として入隊し、幹部を目指すことも可能
- 一般隊員と幹部はそもそも役割が大きく異なる
私も入隊直後は「幕僚長に、俺はなる!」とか言ってふざけていた時期もありましたが、幕僚長を本気で目指すなら「防衛大をトップで卒業」は軽くこなさないと無理な気がします(知らんけど)。
実際に一般隊員と幹部は存在が全く違いますし、一応階級的には幹部の方が偉くて隊長などの役職に就くわけですが、現場で動くのと指揮するのとでは大きく変わってきます。
陸上自衛隊を続けるのにも才能が必要だと思いますし、幹部になるのも才能が必要です。もし幹部になりたいと思うのであれば、ぜひ頑張ってみてください。