割と身近で自殺してしまった自衛官の話

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。今回はちょっとだけ重めの題材で書いていきたいと思います。

それは「自衛官は自殺者が多い」という部分に触れたものです。私は20歳の頃から26歳になるまでの6年間に渡って、陸上自衛隊に在籍していました。

 

自分と身近な同期や同じ小隊に所属している隊員が自殺したというケースはありませんでしたが、何度か顔を合わせたことがある隊員が自殺したという事例を3件経験したので、2年に1人というペースで考えたら割と多いんじゃないかと思います。

これから自衛隊に入隊しようかどうかを考えているという人にとっては「自殺者が多い」という事実は見過ごせないんじゃないかと思うので、今回は「自殺してしまった自衛官の話」です。

自衛隊って自殺者が多いの?

自衛隊そのものが陸・海・空とあって非常に大きい組織ということもありますし、国家公務員という立場もあるせいか、どこの隊の〇〇が不祥事を起こしたとか自殺をしたという情報は、割とすぐ伝わってきます。

それでも一般の会社に比べて騒ぎ立てられるレベルが高いので「そもそも自衛官に自殺者が多いと言うのは、メディアの報道の仕方を見ていてそう感じるだけであって、実はそうでもないのでは?」という人が多いのも何となく理解できるところです。

そこで信頼に足るデータが転がっていないかどうかを調べてみました。

 

二〇〇四年から二〇〇六年までの三年間、自殺した自衛官が毎年百人を超え、更に二〇〇六年度の自衛官の自殺者数は十万人当たり三十八.三人になり、人事院がまとめた二〇〇五年度の国家公務員の十万人当たりの自殺者数十七.七人の二倍強と、国家公務員の中でも自衛官の自殺が突出して多いことが防衛省の調べで明らかになった

自衛官自殺問題に対する防衛省の取り組みに関する質問主意書

ここ最近の統計情報が簡単に出てこなかったので、防衛相が発表している統計情報の中で信頼できそうなものを引っ張ってきたら15年以上前のデータになってしまいましたが、こちらでは年間100人で過去最大という表現をしています。

ちなみに例年だと60人~70人前後であるというような記述が散見されました。

この年に何があったかということを振り返ってみると、イラク戦争が勃発してちょうど自衛隊のイラク派遣があったという背景があったので、もしかするとそれに関して因果関係があるのかもしれません。

 

自衛隊では相談窓口に対するセミナー等がある

今思えばですが、トイレなどの壁に「思い立つ前にまずは相談してください」等の広告やポスターが貼られていて、そういう状況があるだけに私は「やっぱ自衛官って自殺者が多いんだろうなぁ」と思っていました。

ここまで自殺者に対して色々と対策しているなんて、個人的には「自衛隊かパチンコ屋か」ってくらいのレベルだと思うので、同じ体育会系である警察や消防と比べてどうなのかという部分は分からなくても、それなりに自殺してしまう人は多いというイメージです。

 

そしてそんなに頻繁にあるわけではありませんが、たまに専門の講師が外から来て、簡単なセミナーをする時間を設けたりもしています。

ただしこれに関しては、全員が全員そのセミナーを受けるというわけではなく、セミナー講師に対して失礼のないような数の人員を割く(いわば頭数を揃えるという感じ)だけなので、本当に出た方がいいと思える人間を参加させるというよりは「下っ端隊員を参加させておいて波風を立てないようにする」という印象を受けました。

 

私の身近で自殺を選択してしまった隊員の例

いじめを苦に自殺してしまった陸士A

私が生活をしていた寮の同じ階にいた隣の部隊の隊員Aは、部屋に1人で居た所を首を吊って自殺してしまったようです。

その時は私がまだ新隊員の頃で、一緒にモンハンで遊んでいた同期の隊員(私と別部隊で、自殺してしまった陸士Aの後輩)が「先輩隊員に飯上げをしに行く」ということで一時中断していたところ、なかなか戻ってこないので娯楽室を出て見に行こうと思ったら、軽く外がざわついていたという感じでした。

 

自殺した隊員が隣の部隊だということで、詳細情報を知らされることはありませんでしたが、一緒にモンハンで遊んでいた同期が言うには「普段からいじられていたのが苦痛だったんじゃないか」と言っていたので、正式にいじめが苦で自殺したという答えこそ回ってこなかったものの、こっちの部隊としては「あいつら誤魔化したな」くらいの感じだったのを覚えています。

ちなみにいじめに限らずセクハラやパワハラなんてものは「される側がそう感じたらそうなる」という非常に定義が曖昧なものなので、知らず知らずのうちに嫌がらせをしてしまう隊員が非常に多いような気がしました。

 

私なら飲み会の余興で「アキラ100%をやれ!」と言われても、嫌だけど死ぬくらいなら全裸になる方がマシというか、そこまで思いつめたりはしません。

しかし人によっては「みんなの前で全裸になってしまった→もう生きていけない」となってしまう人も少なくないと思うので、体育会系独特の空気感で「やってる方にはいじめているという気が微塵もない」という部分で厄介な気もします。

<<自衛隊にいじめはあるのか?|暴力・体罰などの実態を実経験から語る

 

数ヶ月間、同じ部隊で過ごした幹部隊員B

教員試験の一環でも、研修という感じで学校にお邪魔する機会があると思うのですが、それの自衛隊幹部バージョンという感じで、私が所属していた部隊に一時的に配属された幹部隊員Bも自殺をしてしまったということがありました。

この場合は一緒に過ごしていた期間ではなく、その1年後くらいに「自殺した幹部隊員がいる」というお達しが来て、よくよく名前を聞いたら一緒に過ごしたあの幹部隊員だったという感じでした。

 

自殺の理由などは一切明かされておらず、単に自殺したという事実しか聞かされていなかったので何があったかは全く分かりません。

しかし、幹部ながらも陸士隊員に対しても敬語で接するような腰の低い人だったので、自衛隊とは交われない部分も多かったんではないかと思います。

 

ギャンブルなどの金銭問題で自殺を選択した陸曹C

こちらは直接的な面識があったというわけではありませんが、同じ中隊に所属している同い年の隊員で、大きな中隊行事の時に顔を何度か合わせたことがあるという陸曹Cです。

だいぶ金銭的に追い込まれていたようで、ギャンブルが原因の借金苦が原因で自殺したと聞かされました。

 

ちなみに自衛官は私の体感では給料が少ないという感じは一切無く、ギャンブルをやっている人間は非常に多いものの「一文無しになっても寮生活なら食べるのには困らない」ので、このケースは相当だったんだろうなぁと思います。

そしてカツアゲなどは大ぴらには無いにしても、先輩が後輩からお金を借りたりしたときに、後輩の方から「お金を返してくれとは言いにくい」ということで、自衛隊において金銭問題に関しては結構強めの指導があるのも1つの事実です。

<<自衛隊の金銭事情・給料関係の内部事情|入隊すればお金が貯まる!?

 

自殺するくらいなら逃げ道なんかいくらでもある

借金苦の場合は一般社会にいても一緒だったような気もしますが、それ以外の「自衛隊から解放されることで悩みが解決する」というような場合であれば、冷静さを失わなければいくらでも逃げ道があります。

私なんかだと「自殺を選ぶくらいなら逃げ出せば良かったのに…」と思うのですが、真面目な人ほど追い込まれてしまうという背景があるのかもしれません。

 

ちなみに自衛隊が発表している統計がどういうシステムで自殺認定されているのかどうかは分かりませんが、個人的には「自殺扱いにしているのか、事故扱いにしているのかが不明」という部分もあり、言葉を選ばずに言うのであれば「防衛相が発表している数値が真実とも限らないんじゃないか?」とさえ思っています。

いずれにしても、追い込まれすぎて正常な判断ができずに自殺してしまうというパターンが多いように思えるので、陸上自衛隊の場合は逃げ出そうと思ったら逃げ出せますから、楽観的な人や適当な人という場合であれば、そこまで不安がることもないかと。

 

最後に

私が育ってきた環境では、小学校~高校卒業までの12年間で同級生が自殺したというケースは1件でした。

陸上自衛隊の6年間では身近なところで3人の隊員が命を絶っているので、そういう部分を踏まえると「自衛隊は自殺者が多い」と言えるんじゃないかという考えです(もちろん学生と社会人を比べるのも違うというのは分かりますが)。

いずれにしても思いつめない事が重要で、外の世界に相談できる人がいること、自衛隊内部に愚痴を言い合える仲間がいれば、そんなに大事には繋がらないと思うので、現役自衛官の方々は上手い距離感を保ちながら頑張って欲しいと願う今日この頃です。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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