営内に突如訪れる「台風」の話|自衛隊の悪しき風習の代表格

 

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。

自衛隊内部には台風がきます。…それも寮の部屋の中に。良識ある一般の方は「お前、何言ってんの?」って思うでしょう。それが通常の反応です。

最近は台風などの災害も被害が大きくなっているので、自衛隊で台風と言えば「災害派遣」をイメージするのが一般的で、まさか「先輩隊員による部屋荒らし」という意味の台風が存在するなんて、一般の人には微塵も理解できないでしょう。

 

毎年春になって新隊員が入隊し、そこから前期3ヶ月間、後期3ヶ月間の教育が行われるのですが、この時期の台風はえぐいものがあるんですよね。

今回はそんな自衛隊の悪しき風習「営内(寮の中)を襲う台風」についてご紹介します。

 

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「台風」という名の人為的な破壊活動が行われるまで

 

元々は「だらしない生活をしている時のペナルティ」的な意味合い

自衛隊に入隊すると「ベッドメイク」などを教わり、身の回りの整理整頓などを徹底して叩き込まれます。これは有事の際に「どこに何があるかを把握しておくことで、1分でも1秒でも速く、行動を開始できるようにするため」という最もな理由があり、部屋を汚くしておくという行為は極めてご法度です。

装具などは収納する場所が決められていて、自己流でしまうことは許されません。もちろん隊員としてのキャリアを積んでいけば好きにできるようになりますが、部屋を点検される場合などはちゃんとした位置に直さなければならなくなるでしょう。

 

育ってきた環境によっては「洗濯物もきっちり折りたたんで、身の回りを綺麗に整頓することは当たり前」と考えて動ける隊員がいる一方で、私のように「洗濯機もろくに回したことがなく、洗濯物はハンガーにかけっぱなしで必要に応じてそこから取る」というだらしない人間もいます。

そういう私のようなだらしない隊員にペナルティを与える意味で、突如発生するようになったのが台風というわけです(知らんけど)。

 

バームクーヘンの徹底が甘いと…

自衛隊では、自分のベッドに毛布などの寝具があって、それをきっちり折りたたむように指導されます。それも我流ではなく自衛隊式のやり方を教え込まれ、そのやり方で全員が統制されます。つまり綺麗に畳める人間が出てくる一方で、すごく汚い仕上がりを見せる隊員も出てくるわけです。

この時の畳み方は横から見るとバームクーヘンのように見えることから、「ちゃんとバームクーヘンになってるかどうかチェックする!」ということで、普段から教官に点検されることになります。この時からやり方に不備があると、連帯責任ということで班員全員が腕立て伏せをさせられたりするという感じです。

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で、このバームクーヘンというものは、遠目に見るとバームクーヘンのようになっていても、至近距離から見るとイチャモンが付け放題であることが多いです。そもそも自衛隊で支給される毛布自体が、寸分違わずちゃんとした四角形なのかも甚だ疑問なのですが、教官によってはわずか数ミリのズレも指摘してきます

これは指導する側も分かっていて、あえて理不尽なことを言うという訓練でもあるようです。上下関係を叩きこむ目的だったり、服従させる意味できつく指導したり…。まぁまともな人なら、すごく嫌な気分になることは間違いありません。

 

天気を急に気にし始める教官たち

そして、急に教官たちの小芝居が始まります。凄く晴れた日の訓練中に、ふと「なんか台風きそうだな」とか言い出します。このフラグが立ったら、もうアウトです。

私の教育時には、2度目の自衛隊生活(一度やめて再入隊)という隊員が同期にいて、その人から台風の内容について既に聞かされていました。

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なので、普段は座学中に「寝ている隊員はいないかどうか」を目を光らせて監視している指導教官たちが、ある座学中に一気に数が減った瞬間に「あ、今やってるな…」と気付いたのを今でも覚えています。

要は「みんなが座学を受けている間に、指導係の教官たちが部屋に入って、『だらしないのが好きなら、俺たちがお望み通りに荒らしてやるぜ!げっへっへ~』という感じで、部屋を好き勝手に荒らしている」というわけです。

 

ちなみにここで、本当にだらしない部分だけにピンポイントで台風が来るのか、あるいは連帯責任を持ち出したり、理不尽なイチャモンを付けてくるのかどうかは、指導係の性格や判断によって大きく異なります。

私が新隊員だった頃は、部屋で1番綺麗な奴を除いて全員のベッドや持ち物がメチャクチャにされました。もちろん1番も2番もそんなに変わらないんですよ。でも指導係の思惑として「綺麗にしていたらこんな目に遭わなかった」という正当性を持たせたかったんだと思います。

 

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台風(部屋荒らし)が来た後の寮内は…

 

まず最初に言っておくと、これを指導の一環として考えている教官もいれば、面白ければOKと考えている教官もいます

当時、私は「いい大人がこんなくだらないことして、喜んでるのは気持ちが悪い」と思っていましたが、なぜか今は良き想い出となっているので、頭ごなしにこの風習を否定することはできません。

 

ちなみに私の時は教育隊の班が3×3で9つありましたが、それぞれの班で台風の規模や内容が違いました。とある班は「部屋の中がすべて暴風域で、とんでもない惨状になっていた」のに対し、とある班は「全く荒らされていない人物もいたりして、来るべき所にピンポイントで台風が来た」という感じでしたね。

私は自分でも「周りの隊員よりもだらしなかった」と自負しているので、思いっきりやられても仕方ない部分がありますが、中には「これでダメならもう無理でしょ」というレベルでイチャモンを付けられる人もいるので、どうしようもないです。

部屋の外に木が生えてるんですけど、そこの枝にパンツを掛けられたりしていて、まぁ手の込んだ悪戯をされていたことは、今後の人生でも絶対に忘れないと思います。

 

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最後に

私が在籍していたのは、もう10年ほど前のことなので、もしかすると今は台風が来ないということも考えられます。

しかし、こういうあからさまな悪しき風習は無くなっていたとしても、根底にある理不尽さなどが一掃されたと考えることはできないので、何かしらの理不尽な出来事には見舞われるでしょう。

台風が来た瞬間は腹が立ちますが、私のように「時間が経って笑えるようになった」という隊員は山ほどいるので、適当に受け入れるくらいがちょうどいいと思います。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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