元陸上自衛官のレトロ軍曹です。
自衛隊の入隊試験は幹部を目指す場合はさて置き、一般入隊の場合はそこまで難しくないと言われています。…が、最近は大学を卒業して一般入隊する人も増えているので、一昔前よりも格段に難易度が上がっていると言わざるを得ません。
今回は「陸上自衛隊に入隊したい!/陸上自衛隊の入隊試験を受ける予定」という方に向けて、私なりに思う「入隊試験の対策としてやっておいた方がいいこと」についての助言を書いていきたいと思います。
筆記試験対策は過去問がおすすめ
入隊区分を決める
陸上自衛隊には幾つかの入隊区分が用意されていますが、多くの人は「一般曹候補生/自衛官候補生」という2つの区分から入隊することになるでしょう。
この2つは「18歳以上33歳未満の者で、現段階では幹部になるという目的が無い人」の入隊区分となります(幹部になろうと思ったら、入隊後に幹部の道へ進むことも可能です)。
一般候補生と自衛官候補生の違いについては、大雑把に表現すると以下のようになります。
- 一般曹候補生:曹という階級に昇任しやすい入隊区分
- 自衛官候補生:任期ごとに満了金が貰える
▶陸上自衛隊の一般的な入隊区分の違い|一般曹候補生or任期制隊員どっちがおすすめ?
自衛隊では「曹」という階級に到達して、初めて正社員のような扱いとなります。決められた年齢までに曹になれなければ、残念ながら自衛官を辞職しなくてはなりません。
つまり自衛官として生きていきたいのであれば、当面の目標は「曹になる」ということになるのですが、曹になるには試験に合格しなければならず、その試験に合格しやすい区分なのが一般曹候補生です。
一方で自衛官候補生は、1任期(2年)を勤め上げるごとに満了金と呼ばれる、まとまったお金が貰えます。
「高校を卒業して特にやりたいことが見つからず、とりあえずお金が欲しいから2年(あるいは4年)だけと決めて自衛隊に入隊する」という人も結構多く、こういう人たちは一生自衛隊にいようとは思っていない人が多いので、こちらの自衛官候補生で入隊する人が多いです。
これ以外の入隊区分は、
- 大学を卒業していて、ゆくゆくは幹部になるための道
- 防衛大学の学生になり、お金を貰いながら勉強し、ゆくゆくは自衛官になるための道(自衛官になるための大学というようなイメージ)
- 高等工科学校の生徒になり、お金を貰いながら勉強し、ゆくゆくは自衛官になるための道(自衛官になるための高校というようなイメージ)
という感じです。
試験の難易度自体は低め
私は自衛隊に入ることを強く希望していたわけではなく、市や県の職員などの公務員になるつもりで試験勉強をしていました。
そして、親戚の紹介で自衛隊の入隊試験を受けることになり、最終的に合格できたのが陸上自衛隊だけだったので、泣く泣く入隊を決めたという感じです(一次試験はすべて通りました)。
私は一般的な公務員試験用の問題集をひたすら解き、勉強面に関しては万全の状態で試験に臨んだつもりですが、私の感じたことを正直に言うと「自衛隊の入隊試験自体の難易度は、非常に低かった」という印象です。
市職員、県職員、警察、そして日本郵政公社の試験も受けましたが、試験の難易度的にこれら4つは傾向も似ていたのに対し、自衛官だけは傾向も難易度も全く違ったのを覚えています。
ただし注意したいのは、簡単だろうが難しかろうが「評価は相対的に下されてしまう」という部分です。試験で90点を取ったとしても、周りに100点が多すぎるというケースであれば、落ちることも覚悟しなければなりません。
また、自衛官に関しては他の公務員試験と違って「高卒と大卒の区分に明確な差がない」というのも大きな特徴です。出題される問題は高卒程度に合わせて作られたものですが、それを大卒の受験者も大勢受けることになるので、このあたりは注意しておきましょう。
私のように「他の公務員試験を受けるついでに自衛官の試験も受験する(自衛官より優先順位の高い試験がある)」という場合は、普通に本命の試験対策をすればOKです。
もし「自衛官一本!」という場合は、自衛官の入隊試験に特化した問題集・過去問があるので、同じ問題が出たら完璧に解けるようにしておくだけでも、かなり有利になると思いますよ。
ちなみに1つ前の過去問なら、防衛省のサイトでも公開されています。
面接試験の対策について
最低限の対策だけでOK
筆記試験に合格すると面接試験へと進むことになりますが、個人的には「最低限の対策だけでOK」だと思っています。最低限の対策とは、以下の通りです。
- なぜ自衛隊に入隊したいのか
- どんな自衛官になりたいか
- 自衛官という職業に対して、どんな感情を持っているか
- 家族は賛同してくれているか
- 転勤などもあるが問題はないか
ちなみに「家族が反対している」と回答すると、それだけで落ちます(私がそれで落ちました)。
私は自衛隊の試験を2度受験しているのですが、1度目は「祖母が賛成していません」と答えたところ不合格となり、後に広報官から「おばあちゃんが反対してるって答えたろ?落ちた原因はそれだ」という感じで言われました。
そして、あくまで私が考える「面接の重要ポイント」ですが、答える内容がどうこうというよりは「ハキハキ答えられるか/大きな声で受け答えできるか」などの方がずっと重要だと思っています。
更に言うと「よほど地雷っぽい感じじゃなければ、合格にするのでは?」とさえ思います。
私の印象としては「あまりにもコミニュケーション能力が欠如しているとか、思想的に危険な奴を切り落とす」というイメージです。「目つきがなんかヤバイ」とかは、筆記試験では見抜けませんからね。
▶自衛官候補生試験って誰でも受かる?|受からない人の特徴を大暴露!
一般企業の面接では絶対にやらないようなことが高評価になるかも
一般企業の面接においても「大きな声で、ハキハキと」は好印象だと思いますが、自衛隊におけるそれは、一般企業のものとはレベルが違います。
表現が難しいんでアレなんですけど、一般企業の場合だと「いやいや、大きい声なのは良いんだけど、そこまで大きくなくても…」っていうラインがあると思うんです。
「大きな声で、ハキハキと(ただし常識の範囲内に限る)」というか、相手に聞き取りやすい声量で受け答えするというのも社会人の常識という考えって言うんでしょうか。
一方で自衛隊入隊試験の面接なら、たぶん「枯れるくらいの大声で受け答えしてもマイナスになるということはなく、むしろ好印象になるのでは?」くらいのイメージです。
実際に私も入隊後に曹に昇任するための試験対策として、部隊で面接練習の指導を受けたことがありますが、一般企業の面接でやるような面接とは全く異なる、異次元のような面接練習でした。
- 受験番号や氏名を言う時は、とにかく大声で(例えるなら、甲子園の選手宣誓くらいのノリ)
- 言葉に詰まったら黙って考えるのではなく、大きな声で「少々考える時間をください」→考えがまとまったら「考えがまとまったのでお答えします」と言ってから、話し始める
- 面接が終わったらスッと立ち「〇〇は面接が終わり、帰ります」と言ってから、退室する
「面接官が複数いるときは、話す人に向かって正対しながら」とか「どうぞと言われてから椅子に座る」などは一緒です。
しかし、一般企業などでは「よどみなく喋れる」などもプラスに働きそうな気がしますが、自衛隊の面接試験に関しては「詰まってもいいから、その際には断りを入れ、自分の言葉でいかに簡潔に伝えられるか」の方が重要視されているような気がします。
ちなみに、自衛隊員が内部で面接試験を受けるという場合は、入室から椅子の位置に向かうまでにもルールがあり、大袈裟に言うと「行進するかの如く腕を振りながら椅子に向かう」という、ちょっと気持ち悪いことをバカ真面目にやっています。
これが良いとされている組織の面接ですから、入隊試験でも大袈裟すぎるアピールがマイナスになるような気はしません。少なくとも私は、自衛隊生活で「声が小さいと怒鳴られたことは何度もありますが、声がでかいと怒られたことはない」ので。
試験合格後の体力的なものについて
警察や消防の試験では、一次試験に体力試験があります。しかし、自衛官になるための試験には体力試験がありません。恐らく警察や消防に関しては、自衛官に比べるとかなり早い段階で実技・実務の場面が訪れることが想定されるのでしょう。
自衛隊に関しては、体力はあるに越したことはないですし、体力があった方が訓練も楽に感じられるので、鍛えられるなら鍛えた方がいいです。
ただし付け焼刃のトレーニングをやっても意味ないですし、怪我なんかしたら最悪ですし、慌ててやるようなものでもありません。というわけで「入隊してからビシバシしごかれれば?」くらいの感じですね。
ちなみに当ブログでも、自衛隊への入隊を控えた新隊員たちに対してアドバイスを送った記事があります。その記事内では…
- 虫歯は治しておけ!
- 事前に用意しろと言われているものの準備は怠るな!
- とにかく遊べ!
- ジャンクフード(食べたいもの)を食え!
というアドバイスをしています。
▶入隊を控えて「入隊までに何をすればいいか」と考えている隊員たちへ
最後に
とりあえず筆記試験については、過去問をやっておくのが手っ取り早く、最善の方法だと思います。
面接試験に進んだら、自分がどうしても自衛隊に入隊したい思いをぶつければいいです。多少大袈裟になっても「愛国心、自衛官のすばらしさ、一企業ではなく国に奉仕したい」というベクトルでアピールすれば、マイナスにはならないはず。