任期制隊員から一般曹候補生の試験を受け直すメリットとは?

 

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。

自衛隊に一般入隊する場合は「一般曹候補生と任期制隊員」という2つの入隊区分が存在します。この2つの違いは「曹」という階級への昇任のしやすさです。

曹になれれば、悪い事をしない限りは定年まで勤めあげることができますが、一定の年齢まで曹になれなければ自衛隊を辞めなければなりません

 

語弊を恐れずに表現するなら、

  • 曹:正社員
  • 一般曹候補生:社員になりやすいアルバイト
  • 任期制隊員:社員になりにくいアルバイト

みたいな感じです。

 

ただし任期制隊員の場合は、曹になりにくい代わりに2年、4年、6年という2年単位の節目で「満了金」と呼ばれる臨時ボーナスがもらえます。

なので人によっては「満了金を貰って辞める」という人もいるので、こういう人は一般曹候補生で入隊すると損をしてしまうかもしれません。

 

入隊前にどちらかの試験、あるいは両方の試験を受験して入隊することになると思いますが、もし「一般曹候補生で入隊したかったけど、任期制隊員の試験にしか合格できなかった」という場合は心配無用です。

今回は「任期制隊員から一般曹候補生の試験を受け直すメリット」について、実例を交えながら紹介したいと思います。

 

私が在籍していた頃と事情が変わっている可能性があります。どうしても気になる場合は、地方協力本部、広報官、入隊後に直属の上官に聞くなどしてください。

 

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一般曹候補生と任期制隊員の違い

 

私がちょうど自衛隊に入って少し経ったくらいの頃に、一般曹候補生という制度ができました。

これまでは「曹候補学生/曹候補士/任期制隊員」という3つの入隊区分があったのですが、曹候補学生と曹候補士が合体して一般曹候補生が出来たと言われています。

 

  • 曹候補学生:3曹が約束されている
  • 曹候補士:曹を目指しやすい入隊区分
  • 任期制隊員:曹にはなりにくいが、満了金が貰える

 

一般的には「曹候補学生>曹候補士>任期制隊員」の順番で試験が難しかったと言われており、曹候補学生はエスカレーター式で3曹になれたという制度です。勉強が得意な人が多かったですね。

「絶対に自衛隊で一生やっていくんだ!」という人にとっては最高の制度でしたが、なぜか無くなっちゃいました。真偽は不明ですが「本人の素養が関係なしに、入隊時点の学力で曹を約束してしまった弊害が大きかったのかな?」なんて思ったり思わなかったり。

 

曹候補士や任期制隊員だと、一般部隊に配属されてからの振る舞いとか、勉強はもちろん体力的なこととかで選抜されることになるのに対し、曹候補学生はそういう争いなしで曹になれるという制度だったので、もしかすると「曹候補学生で曹になる隊員の質が低い」とか、そういう話があったのかも。

※あくまで私の勝手な想像です。

 

いずれにしても、試験を受けずして曹になれる制度が撤廃されて、その中でも「曹になりやすい方と、曹になりにくい方」という2つのルートが用意されています。

これから入隊する人は、どっちも試験を受けろと広報官から言われると思いますが、どっちも受かった場合は「現時点で陸上自衛隊に一生勤め上げる気があるかどうか」で決めましょう。

陸上自衛隊の一般的な入隊区分の違い|一般曹候補生or任期制隊員どっちがおすすめ?

 

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任期制隊員から一般曹候補生へ(入隊後に試験の受け直しが可能)

大半の入隊希望者は、2つの試験を受験してどちらかを選択する

おそらく広報官を通じて入隊希望の手続きをするという人が大半だと思うのですが、この広報官は入隊希望者を1人でも多く勧誘することが仕事なので、基本的には2つとも試験を受けさせる方向で来ます。

知らないと損!自衛官になる為の窓口「地本・広報官」に関する注意点

 

これまでの人生において「第一希望、第二希望」みたいなものを躊躇なく書いてきた人なら、「2つ受けてた方がどちらかに通るから安心」と考える人が多いでしょう。

でも「こいつは第一希望しか書いていないから、こいつを合格にして、代わりのこいつを第二希望に…」みたいな流れを想像したことってありませんか?

 

私が採用担当者ならですよ?「一般曹候補生をあと1人取るという時に、一般曹候補生しか希望していない人間と、第二希望もしっかり書いている人間がいたら、前者を曹候補生、後者を任期制隊員にする」という判断をするような気がします。

もちろん人事採用はブラックボックスなので、実際にそのようなことがあるのかどうかは分かりませんが、いずれにしても「一般曹候補生と任期制隊員」は、同じ自衛官になれるルートでも中身が全然違うので、ちゃんと考えて決めましょう。

 

自衛官候補生募集案内

 

辞める気満々なら任期制隊員で入隊した方が、2年と4年の満了合計で200万円くらいもらえますよ。一般曹候補生で入隊して4年で辞めても、200万円はもらえないので。

 

一般曹候補生で入隊したかったのに、任期制隊員しか合格できなかった

両方の試験を受ける人が多ければ多いほど、「一般曹候補生で入隊したかったのに、任期制隊員しか合格できなかった」という人も出てきます。

…が、これに関しては「入隊した後で試験を受け直す」ということが可能です。当時、私がいた部隊でも「任期制隊員として入隊したけど、陸曹を目指して頑張りたい!」という若い隊員が結構いました。

 

で、中隊で10人くらい受験して9人受かってたので、たぶん外から受験するよりも現役自衛官が合格しやすいとかもあるんじゃないかと思います。

しかもこの場合、また再入隊からやるわけではなく、現時点での立ち位置は守られるので、一生自衛隊にいたいという気持ちがあるのであれば、とにかく何とかして入隊してから曹を目指した方がいいでしょう。

 

一般曹候補生の「曹のなりやすさ」ってどのくらい優遇されるの?

入隊時の年齢、満了金までの年数、どれだけ自衛隊に残りたいか、本人の素養…などなど。

任期制隊員で入隊して、一般曹候補生の試験を受け直そうとする場合は、色んな部分を天秤にかけて判断することになります。

 

極論を言ってしまうと、任期制隊員でも優秀な人は曹になりますし、一般曹候補生でも曹になれることが約束されているわけではないです(自分で諦めた以外の道で、曹になれなかった隊員がいるかどうかまでは知らないけど)。

 

陸曹候補生試験って、本人の素養や努力は同然としてタイミングや運なんかも重要だったりします。

もともと「合格枠」というのがあって、自分が活動している部隊にその枠が与えられるので、中隊長などの偉い人が「こいつにしよう、こいつの方がいいんじゃないか?」みたいな決め方をしているようです。

 

素行が悪いというケースはさて置き、ちょっと要領が悪くて勉強も運動も苦手だけど人間性は悪くないという隊員であれば、何度も試験に落ちていたら「いい加減、こいつ行かせてやらないか?」みたいな話になると思いませんか?

これは部隊に合格枠があって初めて出来る話なのですが、合格枠の貰いやすさが一般曹候補生の方が貰いやすいと言われているので、自衛隊に一生勤め上げると決めているのであれば、一般曹候補生が間違いないです。

 

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最後に

【任期制隊員から一般曹候補生の試験を受け直すメリット】

  • 曹を目指しやすくなる
  • 入隊した時の序列を維持しながら、一般曹候補生としての恩恵が受けられる

 

あくまで私が見てきた感じだと「任期制隊員はどんなに自衛隊に残りたいと言っても、それなりの結果を残してもらえないと厳しい」というのに対し、一般曹候補生は「最低限の条件さえクリアしてくれていれば、いつかは合格させてあげたいという情が働きやすい」ような気がします。

もちろん私がいた当時と状況は変わっているかもしれませんし、そもそも情に流されない厳格な人が決める場合はアレですが。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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