元陸上自衛官のレトロ軍曹です。この記事では以下のようなことが分かります。
- 自衛隊に入隊する時は坊主にしなきゃだめ?
- 自衛隊で坊主が強制される時期
- 自衛官になったら茶髪、オシャレな髪形は一生無理?
- 自衛官に許されている髪型とは
中学・高校の運動部には「新入部員は坊主」という風習が残っている所もあるかと思います(最近はパワハラになるから少ないのかな?)。しかし自衛隊では半ば強制的に坊主にさせられるタイミングが存在し、それ以外では「ルールを守っていればある程度まで髪を伸ばすことが可能」です。
お父さんになった時に子供の授業参観に行って「あの人、たぶん自衛隊だ」とバレない程度の風貌になることは十分に可能と言えるでしょう。今回は自衛隊における髪型やオシャレの自由度、坊主を強制されるタイミングについて、私の実体験を踏まえながらご紹介したいと思います。
自衛隊に入隊する時は坊主にしなきゃだめ?
入隊時に坊主以外だと入隊式前に坊主にさせられる
私は中学生以降、髪を短くしたことがありませんでした。で、自衛隊に入る時に短くしてから行ったんですが、坊主じゃなくてスポーツ刈りみたいなやつで行ったんですよね。ちなみに班員はほぼ坊主、一人だけ普通の髪型をしていた人物がいて、彼は入隊式の前に班長からバリカンでやられていました。
私も坊主に比べるとちょっと前髪がある状態で入隊したので、3ヶ月間の前期教育中に「お前、髪伸びてきたな」みたいなことを散々言われて、班内で断髪式みたいなのをやるっていう…。班員全員に少しずつバリカンを入れてもらった記憶があります。
自衛隊っていつまで坊主じゃなきゃだめ?
自衛官を見る機会がある人なら分かると思うんですが、基本的にずっと坊主じゃなきゃだめってことはありません。何なら「ひげ」もちゃんと上官に許可を取ればルールに沿って伸ばすことも可能です。
節目節目で坊主にしなきゃいけない期間があって、少なくとも「後輩隊員ができるまで」はかなり厳しい基準になっています。あとは自衛隊には士と曹という階級の壁があって、士は試験に合格しないと曹にはなれないんですが、曹になるまでは坊主にする機会が訪れることになるでしょう。
自衛隊生活で坊主を強制されるタイミング
自衛隊に入隊してから1年半(新隊員時代)
自衛隊には新隊員と呼ばれる期間が約1年半あります。この時期は基本的に坊主です。私が所属していた部隊では「次の新隊員が入ってくるまでは坊主」という決まりがあり、基本的に新隊員時代の1年半は坊主頭の人が多かったです。
私は入隊する前「坊主が嫌だから入りたくない」と言ったところ、広報官から「短くはしてもらうけど、スポーツ刈りでも大丈夫だよ」と言われて入隊し、その2ヶ月後には3mmの坊主頭になりました。
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新隊員時代は前期教育から後期教育へ移行するタイミング、部隊配属になるタイミング、階級が上がるタイミングなど様々な節目が訪れます。その節目節目で「ピシッとしろよ」という圧力がかかるので、よほど嫌じゃなければ坊主にした方が無難ですし、風当たりも強くならずに済むでしょう。
曹試験の受験~教育中
陸士=派遣社員、陸曹=正社員みたいなイメージ
自衛隊は入隊しただけで一生安泰というわけではなく、入隊後の試験に合格しなければ一生残るということはできません。ちょっと語弊がありますが「士=派遣社員、曹=正社員」みたいな感じで、士のまま昇進できずにいると年齢でいつかは切られてしまう運命にあります。
陸上自衛隊を例に挙げると、一般隊員の入隊時の階級は2等陸士です。ここから入隊区分の差によって若干のスピード差はあるものの、黙って自衛隊に在籍していれば1等陸士になり、その後も時間経過だけで陸士長へと昇級します。
陸士長になったら次の階級は3等陸曹なのですが、これには試験に合格しなければなれません。そして自衛隊に一生勤めたいと思うのであれば3等陸曹になることが必要です。
陸曹になる昇任試験の受験資格は坊主!?
陸曹になる試験は決して簡単なものではありません。…が、受けるのも自衛官だし選ぶのも自衛官(身内)です。最低基準さえクリアしているなら「あいつもそろそろ合格させてやるか」みたいな忖度が無いわけではないので、何年も昇任試験を受け続ければよほどセンスが無いとかじゃなければ合格できることが多いです。
この試験が厄介なのは「筆記試験と体力試験に合格し、その後の面接試験に合格しなければならない」という試験部分ではなく、試験を受けるという姿勢を強く求められるという点です。
早い話が「ちょっと調子に乗ってオシャレをするようなチャラチャラした気持ちで国が守れるか!?」というような滅茶苦茶な言いがかりにも似た部分があり、試験を受けるためには坊主頭が必須というような空気に溢れています。
昇任試験に合格しなければ坊主の期間が長くなる
1回で試験に合格できれば、後は陸曹教育課程の3ヶ月間を坊主頭で過ごせばもう坊主に縛られることはほとんどなくなるでしょう。しかし試験に合格できなければ、毎年1年周期で坊主頭にしなくてはならないタイミングが巡ってくることになります。
10代後半や20代前半の一番女子と仲良くしたい時期に坊主を強制されるというのも辛いですが、20代後半になって世間的には割と良い大人になっているのに坊主を強制されるというのも中々辛いものがあるので、それが嫌なら一刻も早く試験の合格を目指しましょう。
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何か悪いことをしたタイミング
私は6年間の自衛隊生活で「割といい大人(もちろん私よりも先輩で階級も三等陸曹以上)の人が坊主にした(半ば強制的にさせられた)」という事例を2つほど見たことがあります。
1つは自衛隊の身分証を紛失したケース、もう1つは駐屯地内で酔っ払ってトラブルを起こしたケースです。この2つはそれぞれ陸曹が坊主頭にしていました。
ちなみに身分証を紛失した方の当事者は私にとって2人部屋の相方だったのですが、話を聞いたら「坊主頭にしろと言われたわけではないけど、今後の自衛隊生活で反省と誠意を見せろと言われ、その中に坊主頭も含まれているという圧を感じた」ということで、決して強制ではなかったようです。
自衛官の髪形に関するオシャレの制限と制約
坊主頭ってどの程度の坊主?
坊主にも色々あるじゃないですか?一休さんやマルコメ君、磯野カツオのような、今時小学生でもいないような坊主頭もあれば、桜木花道のようなちょっとやんちゃ坊主みたいなパターンもあります。
私の時は「15mmがギリギリ」というイメージでした(15mmあればシャンプーがしっかりと泡立ちます)。20mmにもなるとガッシリ掴めるので、やり直せと言われた人間が何人かいましたね。
15mmだと掴めるものの「ちょっと長いんじゃねーか?」という小言や嫌味を言われるだけで済むことが多く、どうしても坊主頭にしたくないという同期は15mmや12mmのアタッチメントで坊主にしていました。
スキンヘッドは逆にNG
私はどちらかと言うと「20歳も超えてるのにいちいち髪の毛がちょっと長いなどのくだらない理由で、年下の先輩から小言を言われる方が嫌だった」ので、毎回3mmの坊主頭にしていました。3mmは完全に青くてマルコメ君レベルです。シャンプーも泡立ちません。
最初は坊主が嫌で入隊したくなかったのですが、いざ坊主頭にしてみると別にそこまで嫌じゃなかったという部分もありつつ、何より「人が嫌がる姿を見て楽しんでいる先輩隊員たちに腹が立つ」という部分が強かったです。
何なら「そっちがその気なら…」という感じでスキンヘッドにしてやろうとも思いましたが、残念ながら安全管理上スキンヘッドは許可されておらず、3mm以下だと逆に許可されないという感じでした。
昇進した後の自衛官の髪型の自由レベルについて
常に見られているという自覚が必要
これまでに自衛官だった経験がある人は、何となく「あいつ自衛官っぽいな」という人を見た目で判断できると思います。仮に坊主頭じゃなくても、何となくそれっぽい空気感があるんですよね。
一般の方がそれに気付くかどうかはわかりませんが、駐屯地から出る所を目撃されたらそれはもう自衛官だとバレてしまいますから、駐屯地から出る時の服装は意外と厳しかったです。例えば「サンダルはダメ/あまりにも奇抜な服装はダメ」などは、私が経験した部隊すべてで共通でした。
私の同期の女性自衛官の一人は「ゴスロリ系のファッション」が好きで、メイド喫茶などにスタッフとしていそうな服装で外出している人もいましたが、駐屯地から出る時はジーンズにTシャツというラフな服装で出て、駅のトイレで着替えていたようです。
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髪の毛は帽子で隠れる部分は長くてもOK
自衛隊では常に戦闘帽・迷彩帽を被ることになります。そのため「帽子を被った時に見えない部分の髪型はある程度自由」でした。
分かりやすく言うと、映画クローズで小栗旬さんがやっていたような髪型は割とセーフ(限度はあります)です。さすがに同じ髪型には厳しいものがあり、もみあげ部分や襟足部分は短くないといけませんが、頭頂部は帽子に収まる範囲で長くしてもいいというイメージでOK。
これなら一般の会社に勤めている営業職の人と比べても自由度は変わらないですし、営業職なんかに比べるとむしろ自衛隊の方が自由かもしれません。
「地毛です」と言える程度の茶髪隊員はいる
本当か嘘かは別にして、普通に見た時に「地毛です!」って言われたら納得してしまうレベルの茶髪隊員はいました。「髪の毛、染めてんじゃねーか?」と言われるかどうかについては、たぶん先輩がめちゃくちゃ怖い男子校くらいのノリじゃないかと思います。
私が見てきたパターンでは、陸曹候補生試験を受ける前に「あ、こいつやりやがったな」という例が1件あるだけで、それ以外の隊員で明らかにやっているという例は記憶にありません。
ちなみにこの例だと、先輩たちの中でも「あいつ絶対やってるよな」という噂になりながらも、直接注意しに行くような先輩隊員は一人もおらず、むしろ「どうせ間もなく陸教(坊主強制の教育隊)に行くんだから見逃してやれ」くらいの感じでした。
ちなみに私が所属していた部隊では地毛で明るい髪色の隊員がいましたが、最初こそ「なんもやってねーよな?」と確認されたりしていたものの、それが地毛っぽいと認識された後は別に黒くするように言われたりなどもしていなかったです。
地毛なら問題ないですし、バレないようにやりたいって話になってくると上手くやれる人なら節度を守ればいけるような気がします(上官や先輩に気に入られる等の風当たりの部分も重要です)。
自衛官の髪型事情 まとめ
- 自衛官として若いうちは坊主にしなければならないタイミングがある
- 曹に昇進した後は坊主になることはほとんどない
- 茶髪や奇抜な髪形はよぼどじゃなければ部隊の空気でOKになることも
自衛隊では最初は坊主にした方が波風は立たないと思います。あとは節目節目で無言の圧をかけられるという感じですね。坊主にしろと明確に言われることはあまりなくて、髪の毛が2センチとかで「髪長くなったから切れ」と言われるみたいな。
自衛隊は良くも悪くも「中学・高校の上下関係がその後も続いてるようなイメージ」なので、自分が先輩にやられて嫌だったことを後輩にするという人間が少なくありません。先輩隊員が自分のことは棚にあげて人の髪を掴んできたりすることもあるので、ある程度は我慢することも必要かもしれません。