脱柵者、脱走者|駐屯地に帰ってこない隊員は最終的にどうなる!?

 

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。

そんなに頻繁にあることではありませんが、身近で起こってもそこまで驚かないのが「脱柵(脱走)する隊員の出現」です。脱柵と言うか脱走と言うか、まぁ門限になっても帰ってこないというのが多いんですが…。

 

入隊時、脱柵に関してはかなり口を酸っぱくして警告されるので、実際にそのような隊員が身近で出た時、個人的には「もっと大事になるんだと思っていたから、逆に拍子抜けした」というのが本音です。

そこで今回は「駐屯地に帰ってこない隊員は最終的にどうなるか」について、私が見てきた例を簡単にご紹介したいと思います。

 

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脱柵した隊員に対する処罰の本音と建て前

指導上は「とても大変なことになる」というニュアンスで脅す

 

入隊して最初の週末外出の時に、門限に関する説明があったと記憶しています。この時に「たまに帰ってこない奴がいる」という説明があり、結構な熱量で脅されました。

具体的には「隊員たちが大人数で消息を探す(この時の費用や隊員たちのお給料は脱柵した隊員が負担する)」というようなことを言われたように記憶しています。

「300人で日当1万円だったら、それだけで1日300万だ」みたいなことを言われて、周りの隊員たちと「絶対に嘘」と心の中ではバカにしていましたが、それを説明する班長の目はマジでした。

 

脱柵費用の請求は行われる!?

 

じゃあ実際に脱柵者が出たら、派手な捜索をしてその費用を本人に請求するかどうかというと、私が見てきた例ではそういう事例は1件もありませんでした

実際は「電話で戻ってくるように諭す→帰隊後、速やかに退職へ」という流れです。

というのも私が見てきた限りでは、全員自分の意志で駐屯地に戻らないという選択をしているものの、電話にはしっかりと出て連絡が取れたというケースばかりなので、捜索する必要がなかったからとも言えるかもしれません。

 

それに普段なら電話に繋がった時点で「なにやってるんだ!一刻も早く戻ってこい!」とでも怒鳴り散らしそうなものですが、周りもかなり重く受け止めるようで「とりあえず明日、午前中に戻ってこい。1人で戻ってこれるか?」というような感じです。

そして戻ってきたら隊長などと面接をし、現在抱えている仕事の申し送りなどが済んだら退職するという流れでした。

ちなみにゴールデンウィークで脱柵したら、5月中には退職できるような感じで比較的早く辞めることができるので、個人的には「本気で自衛隊を辞めたいという意志があるなら、そういう気持ちも分かる」という気がします。

 

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脱柵した隊員が戻ってこなかった理由

駐屯地に戻るのがたまらなく嫌だった

 

大体これがもっとも多い理由だと思います。ゴールデンウィーク、お盆休みあたりになると、休み明けに帰ってこない奴が1人くらい出てきても別に驚きません(いや、珍しいことですけどね)。

私は学生時代に寮生活とかをしたことが無く、実家でも門限がどうこう言われてるような家ではなかったので、割といい大人になってからの「〇〇時までに帰ってこい!」というルールは結構しんどかったです(規則なので仕方ないですけど)。

 

私の場合は大体17時くらいから「あと数時間…」というような感じで焦燥感を覚え、そこからはもう死のカウントダウンという感じで、何をしてても手に付かないという感じでした。

ということもあって、私の場合は「そういう気持ちになる前にもう帰ってしまおう」という方向に考える性格だったので、ある意味では逆に辛い思いはしなかったような気がします。

 

一時のチャンスを無駄に出来なかった

 

その他に多かったのは「女性関連」です。特に彼女がいない男子隊員が、滅多にないようなチャンスを手にした時、ちょっとした出来心で一夜のチャンスを選んだという事例も何件かありました。

居酒屋で飲むにしたって、どんなに早くても18時~19時くらいが相場じゃないですか?それで盛り上がってきて、二軒目に行こうかという話をし始める頃には、もう切り上げて駐屯地に帰らないといけないわけです。

 

こういう場面で、狙っていた女の子と良い感じになったりすると、冷静な判断が出来ずに駐屯地じゃない別の場所に泊まりに行くというケースは、そこまで珍しくもないような気がします。

自衛官としてのキャリアを積めば、駐屯地に帰らないということがどれだけ面倒なことになるかという予想ができる隊員がほとんどだとは思いますが、若い隊員だと「目の前の幸福を掴めるなら、後で面倒なことになっても構わない!」という短絡的な考えをするのも分かりますし、むしろ健全なのでは?

 

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門限になっても戻らない=割とスムーズに辞められるのでは?

 

陸上自衛隊は、辞めると言っても簡単に辞めさせてもらえないというイメージがあります。

私の所属していた隊では、基本的には年度途中での退職は不祥事以外に事例がなく、ほぼ全員が足並みをそろえて3月に退職というカタチでしたし、その間には複数回にわたって説得されたり、辞めることが決まってからは結構な嫌がらせもありました。

<<自衛隊にて「辞めます」と言ってから受けた仕打ちについて暴露する

 

個人的には「辞めると言ってから実際に辞めるまでの期間で、資格を取ったりすればいい」くらいの感じでしたが、それくらい楽観的なスタンスでも最後の半年は本当に辛かったので、一刻も早く辞めたいという隊員にとっては逃げ出すのも分かるような気がします。

ただし実際に逃げ出してしまうと、本人よりも周りの人に迷惑が掛かるので、どうせやるなら「脱柵というカードを手にした状態で、退職の交渉をするのがベスト」という気も。

 

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駐屯地から脱走するタイプの脱柵はあまり無い

これまでに書いてきたように、脱柵(脱走)する場合は「門限までに帰ってこない」のがほとんどであり、プリズンブレイクのような感じで「夜中にこっそり駐屯地を抜け出す」というタイプの脱走はあまりありません。少なくとも私が知る限りでは一例もありません。

駐屯地を外から見てもらうと分かると思うのですが、大半の駐屯地の外壁には有刺鉄線が巻かれていることと思います。そして夜中も必ず見張りがいます。さらに赤外線センサーなどで常に監視されているので、駐屯地内から逃げ出すというのは結構難しいです。

 

赤外線センサーが反応しても強引に逃げ出せば、見張りが来る前に遠くに逃げられるでしょうが、結局翌朝の点呼でいないということがバレてしまいますし、そんなことをしなくても「刑務所とは違って毎週末に外出のチャンスがある」ので、その時に帰ってこなければいいだけの話なんですよね。

ちなみに私自身、何度も「帰りたくねー」と思ったことがありましたが、本気で脱柵をしようとしたことは一度もありません。

 

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最後に

個人的には、脱柵や門限になっても帰らないという愚行は決しておすすめしません。先輩隊員たちの全員が全員クソ野郎ならいいのですが、中には面倒を見てくれた優しい先輩も1人くらいはいるでしょう。

そういう人に迷惑をかけてしまうのは、不義理以外のなんでもないような気がします。

脱柵をチラつかせて「辞めさせてくれ!」と言えば、大抵は真剣に話を聞いてくれると思うので、退職したいという場合はこのような方向からのアプローチをおすすめします。

一時の迷いは振り切れ!帰りたくないと思ったら、意地で「帰らなきゃいけないんだ!」と自分に言い聞かせろ!以上!

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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