「上官の命令に服従する義務」こそがパワハラなのでは?

 

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。

先日、「自衛隊ってパワハラの温床なんですか?」というような質問を頂きました。

まぁそれこそ「部隊によりけり」だと思いますが、自衛隊に関しては一般社会よりも、その気が強いのではないかというのが私の考えです。

 

やはり一般社会よりも指揮系統を重んじますし、階級社会と言われていますし…。

というか、そもそも「上官の命令に服従する義務」が既にパワハラじゃないかとも思うわけですが。

そこで今回は、自衛官の6大義務の1つ「上官の命令に服従する義務」について書いていこうと思います。

 

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上官の命令に服従する義務とは?

自衛官の6大義務

  • 指定場所に居住する義務
  • 職務遂行の義務
  • 上官の命令に服従する義務
  • 品位を保つ義務
  • 秘密を守る義務
  • 職務に専念する義務

 

自衛官には上記6項目の義務があります。

1つ1つ見ていったら、特におかしな義務はなく、ごく当たり前のことを堅苦しい文章によって定められているだけです。

 

ちなみに入隊直後、緑本なる「自衛隊のルールが書かれた分厚い本」を支給され、教育終了時には、そこに記載された内容についての試験が行われますが、6大義務と自衛官の心構えは鉄板だと思います。

私が陸上自衛隊に在籍していたのは10年も前の話ですが、たぶんこれは変わってないはず。

 

「秘密を守る義務」に関しては、当ブログはスレスレかも分かりませんが、一応「機密情報」については配慮しています。

 

職務上、上官の命令に服従するのって当たり前なのでは?

ここでちょっと気になる点について触れていこうと思います。

一般の会社にしろ何にしろ、上司の命令に服従するのって当たり前じゃないですか?文言にトゲがあるような気がしなくもないですが、言い換えたら「上司の指示に従う」ってことだと思うんです。

 

一般の会社でも、社長が「右を向け!」って言ったら、社員は右を向くものなのでは?

ですから、この「上官の命令に服従する義務」そのものに対して、何かを思うということはありません。

問題なのは「分かり切ったことをあえて念押ししてくる姿勢」とでも言いましょうか。

 

例えば、自衛隊には幾つかのルールがあって、服務規程などに明言はされていませんが、「雑用をするのは1番下っ端の隊員」というのは、どこの部隊も全国共通なのではないかと思います。

まぁもしかすると、下っ端隊員が雑用を行うというのは「上官の命令に服従する義務の範疇」という意味なのかもしれません。

いずれにしても、いい大人が「当たり前だと思っていることをルール化される」というだけでも、妙な圧迫感というかプレッシャーが生まれるのは事実です。

 

  • やむをえず出勤できない場合は、事前に上司に報告し、許可をもらうこと
  • 業務中にトラブルがあった場合は、速やかに上司に報告すること
  • 外から帰ってきたら、うがい・手洗いをすること
  • 家賃、光熱費は遅延なく納めること
  • 毎日、水を飲むこと

 

なんか水を飲むことにも抵抗が生まれるというか、「なんであえてそれを言うの?」という部分が出てきませんか?

 

「上官の命令に服従する義務」は、あくまで職務上

入隊してからこれを学ぶと、事あるごとにこれをイジるような形で、ペナルティを与えられるまでがデフォです。

例えば、髭の剃り残しがあれば「品位を保つ義務に違反している」となり、全員で腕立て伏せとか、腕立て100回の途中で潰れたら「職務遂行の義務に違反している」とか。

 

この辺りは、入隊直後の教育隊でどんな教官に当たるかという部分が大きいですが、教官によっては「面白おかしくして、すんなり自衛隊のルールを覚えてもらおう」と考えているのかもしれません。

ただ、割と高確率で「飲み会などの際に『上官の命令に服従する義務』を持ち出して、結構な無茶ぶり」をされることがあります。

 

ぶっちゃけ「上官の命令に服従する義務」はあくまで職務上に限られるわけですが、それをその場で言ってしまうと、「お前は冗談も分からないのか」となりますし、更に酷いケースだと「今この場も職務中だ!」とか言い出す上官もゼロではないと思います。

「長い物には巻かれろ」ではありませんが、自衛隊でうまくやっていくコツは、先輩隊員に可愛がられることなので、時には正論をグッと堪えることも重要です。

 

自衛隊は24時間勤務というか、寮の中にいても完全なオフと言っていいのかどうか微妙な部分があるので、厳密に言うと「勤務時間外も職務中」なのかもしれません。

 

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パワハラと「上官の命令に服従する義務」の関連性

 

最近は何かあればすぐ「パワハラ」と言われる時代になったような気がしますが、ニュアンスでは理解していても、パワハラというものが何なのかを説明しろと言われたら、なかなか難しかったりもします。

そこで、パワハラを文章にすると、どういう内容になるのかWikipediaで調べてみました。

 

パワーハラスメント(和製英語: power harassment)とは、社会的な地位の強い者(政治家、会社社長、上司、役員、大学教授など)による、「自らの権力(パワーハラスメント)や立場を利用した嫌がらせ」のことである

パワーハラスメント(Wikipedia)

 

  • 挨拶の声が小さいから腕立て伏せ
  • 部屋の窓のフチにホコリがあるから外出禁止
  • 飲み会の余興

 

これらは全て「上官という立場を利用した嫌がらせ」なのでは?

まぁ嫌がらせと受け取るか、教育的指導と受け取るかの違いもあるでしょうし、世論は「体罰も時には必要だ/どんな時も体罰はいけない」という両極の意見が真っ向から衝突している状態です。

 

正解と不正解に無理やり括ろうとするから難しい問題になってますけど、陸上自衛隊では「悪いことをしたら叩かれる/嫌がらせではなく愛のある指導」が蔓延していることは間違いないでしょう。

陸上自衛隊時代に体験した体罰の話|意外と知られていない内部事情

 

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最後に

「上官の命令に服従する義務」自体は、別に何てことないんですけど、なんかモヤモヤの残る義務でした。

 

例えば私が今勤めている会社にも、「有給休暇を取る際は、内容を明確にして上司から許可を取ること」というようなルールがありますが、「人を殺めてはいけない」というような当たり前のルールは明文化されていません。

 

上官の命令に服従する義務というのも、それに近いものを感じるんですけどね。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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