元陸上自衛官のレトロ軍曹です。
私はかなりだらしない性格で、自衛隊時代の部屋やロッカーはめちゃくちゃ汚かったので、先輩から指導された経験が何度もあります。
そういう特殊な事情を抱えているので、正直言って「身の回りから何かを盗まれても気付かない」という、幸せなのか不幸なのか分からない状況でした。
そして、陸上自衛隊に身を置いていた6年間の間に自分の部隊で2度ほど、同じ階に住んでいる他部隊の事件で1度、営内での窃盗や盗難について事情聴取をされたことがあります。
この記事では「自衛隊の寮内で見られる窃盗や盗難などの犯罪」についてご紹介します。
自衛隊内では盗難事故が多い(らしい)
部屋に鍵は掛けられず、不特定多数の人間が出入りする
陸上自衛隊では、複数の隊員で1部屋を割り当てられることになりますが、部屋そのものに鍵を掛けることが出来ません。
理由としては「10人部屋だったとして、いちいち鍵をかけたりするのが煩わしい」という部分もあるでしょうし、そもそも自殺防止的な観点からも鍵を付けていないようです。
なので、個人の貴重品は自分のロッカーに入れ、そのロッカーに鍵を掛けて盗難を防止するというのがルールとなっています。
ただ、本当に貴重な物(財布とか携帯電話、スマホとか)はロッカーにしまうとしても、「ロッカーに入りきらないもの=貴重じゃない」ということでは無いじゃないですか?
しかしながら「ロッカーにしまわなかった物=盗難のリスクを背負う物」ということになります。
ロッカーにずっと鍵を掛けておくというのも微妙
きっちりしている人であれば、毎回ちょっと部屋を出るという時でも毎回ロッカーに鍵を掛けるのでしょうが、多くの隊員は「ちょっと部屋を離れるくらいなら…」と考えるのではないでしょうか。
例えば、トイレに行くにしてもシャワーを浴びに行くにしても、すぐに戻ってくるつもりで部屋を出て、その先で先輩や同期と会って話し込んでしまったり…ということが普通にあるので、こういう時に何かを盗まれる可能性が発生します。
不特定多数の人間が出入りできる部屋において、鍵の掛かっていないロッカーがあれば、営内の人間なら誰でも盗むことが可能なので、犯人の特定も極めて難しいです。
恐らく盗む側はそれを知っていてやっているのだと思いますが…。
定期的な営内点検は泥棒にとって大チャンス
自衛隊では、定期的に部隊の偉い人が部屋に点検にくることがあります。
「ちゃんと整理整頓しているかどうか」という確認の点検なのですが、抜き打ちではなく、ちゃんと「〇〇日に営内点検がある」と宣言されたうえで実施されます。
この時、部屋の中は生活感が全くない部屋にする必要があり、ハッキリ言って自衛隊の道具以外の物は全て共用スペースに隠すという感じでした。
普通であれば「生活してるんだから、ベッドの横にティッシュくらいあってもいいでしょ」と思うものの、それすらも隠すくらいの徹底ぶりだったのを覚えています。
私は部屋にテレビやパソコンを置いていましたし、ギターなども置いていましたし…。私服や靴の類も山ほど持っていました。
これを部屋に置いたまま点検を受けるということが許されなかったので、共用の倉庫のような所に一時的に放り投げて、営内点検をやり過ごすという感じです。
問題なのは、共用の倉庫そのものに鍵を掛けることは可能なのですが、その鍵は当直が管理していて、点検時期が迫ってくると色んな人間が鍵を使うことになるという点です。
これによって、どこのタイミングで物が紛失したかが分からなければ、犯人が特定できません。
鍵を借りる人は帳簿に名前を書いて、いつ頃返しに来るかという返納予定時間も記入しますが、結局誰かが借りたということが分かれば「そのタイミングで俺も物をしまいたい!」と言い出す奴が山ほど出てきます。
結果、帳簿に名前を記載していない隊員も大量に倉庫に出入りするので、盗難事故の防止には一切なっていないという感じです。
そして倉庫にはみんなが放り込んだ私物が山ほどあるので、ちょっとレアなスニーカーやゲーム系はサクッとやられることがあるとか無いとか。
ちなみによほど用心深い人は、鍵のかかるアタッシュケースなどに物を入れて、それを倉庫にしまったりしていましたが、そもそもテレビやパソコンなんかはアタッシュケースには入らないですし、そこまでやる隊員はごく少数です。
盗まれたと断言できなければ問題にもならない
私のようにだらしない人間だと、何かを盗まれていても気付かないことがほとんどですし、仮に何かが無いことに気付いても「自分でどっかにやってしまった」という発想になります。
前項でご紹介した倉庫に物を置くケースだと、自分が物を置いた後に入った別の隊員が、自分の物を置く場所を確保するのに、既にある物を勝手に移動させたりもするんですよね。
すると、自分で置いた場所から物が無くなったと言っても、部屋の奥から見つかったりすることも普通にあります。
現に「物が無くなった!」と騒いだ隊員が出て、同期みんなで探してたら倉庫の離れた場所から出てきたということが結構ありました。倉庫は常に物が入っているので、見つけにくいという側面もあるのが厄介な点と言えるでしょう。
実際、私の周りにも「机の引き出しに入れていた小銭入れから、お金が減ったような気がする」というようなことを言う隊員は結構いました。
ただ「もしかすると気のせいかも知れない」くらいの感じだと、泣き寝入りする隊員が多かったように思います。
本人の性格にもよりますが、「失くしたんじゃなくて絶対に盗まれた!」と断言できる状況で、かつその後の事情聴取などにも応じるほど憤慨しているという場合でなければ、あまり大問題にはならないような印象です。
たぶん盗む方もそれを理解していてやっているというような気がします。
最後に
ちなみに私が体験した盗難事故3件は、すべて犯人が見つかりませんでした。
営内に住んでいれば分かりますが、実際に物を盗んだところを見られない限りは、普通に盗めると思います。
自分が被害者だったら、この先も泥棒と一緒に暮らしていくという部分に気持ち悪さが残るでしょうし、やりきれない怒りを抱えることになるでしょう。
そうならないためにも、大切な私物を盗まれないように徹底管理を心掛けて欲しいものです。