自衛隊を辞めて10年|今まで一度も後悔していない話

自衛隊を辞めて10年|今まで一度も後悔していない話

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。この記事では以下のようなことが分かります。

  • 自衛隊を辞めて後悔していないかどうか
  • 自衛隊を辞めるときに不安を感じなかったか
  • 自衛隊を辞めてしばらく経った今だからこそ思うこと
  • 自衛隊を辞めようと思っている隊員へのアドバイス

私は自衛隊を辞める時、多くの先輩隊員や上官から「自衛隊を辞めたら絶対に後悔するぞ」と言われました。「シャバはキツイぞ、自衛隊ほどお給料が貰えて休みも多い仕事なんか無いぞ」と飽きるほど言われたのですが、当時の私はそれを真面目に聞いていなかったのを覚えています。

そして現在、陸上自衛隊を辞めてから10年ほど経ちましたが、辞めたことを後悔しているかどうかと聞かれれば「辞めたことに対する後悔は一切ない」というのが本音です。今回は現役陸上自衛官の方で「自衛隊を辞めようかな?」と思っている人に向けて、自衛隊を辞めた先輩でもある私からアドバイスを送りたいと思います。

自衛隊を辞めることを推奨するものではありません。

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実際に自衛隊を辞めた私の経験談

実際に自衛隊を辞めた私の経験談

私が自衛隊を辞めた理由

私が自衛隊を辞めた理由はいくつかありますが、色んなことが引き金になって「もう自衛隊が嫌だ!」と感じてからというもの、自衛隊の全てを肯定できなくなったというのが主たる原因です。「営内(寮)から出たい、地元に帰りたい、全国規模の転勤が嫌だ、頻繁に行われる飲み会が苦痛」などなど、言い出したらキリがありませんがこんな感じでした。

そうやって色んなことが嫌になっている時に少し理不尽な思いをして、あとはもう退職まっしぐらという感じです。ちなみに私は常日頃から不満を感じている所に大きい波が来て、かなり感情的になって退職しましたが、現在自衛官だという人は決して感情的にならないようにして欲しいと思います。

関連記事私が陸上自衛隊を辞めた理由|パワハラで精神が崩壊しかけた日のこと

辞める時に不安を感じなかったかどうか

ハッキリ言って死ぬほど不安でした。特に私の場合は学歴が高専中退で厳密にいうと中卒なので、再就職するにも高望みはできないだろうと思っていましたし、自衛隊に入る前に自分で就職活動をしていて結果を出せなかったという過去もあったので、心のどこかで「人生詰んだ」くらいに思っていた記憶があります。

それでも辞める道を選んだのは「このままここにいると人間としてダメになる」と強く思ったからです。自衛官には人間性の素晴らしい人も多く、本気で自衛官としての使命を背負って日々の訓練に励んでいる人もいますが、中にはそうでない人もいます(そうじゃない人が多い気がします)。

私の場合は「間違いなく後者になってしまうだろう」と感じたので、20代後半に差し掛かって「まだやり直しのきくうちに!」ということで辞めました。私は陸曹としての立場を持っていたので、一生いようと思えば一生いれたと思います。

それでも「人の痛みも分からず、自分より弱い立場の人間だけに威張り散らすような人間になってしまうよりは、給料が低くて休みが少なくなってもいいから『真っ当な人間になりたい』という気持ち」で辞めました。もちろん希望もありましたが、それ以上の不安があったというのが正直なところです。

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自衛隊を辞めてしばたく経った今だからこそ思うこと

自衛隊を辞めてしばたく経った今だからこそ思うこと

強がりなしで後悔はしていない

私が自衛隊を辞める時は、あまり得意じゃない先輩隊員からも「辞めると後悔するぞ?」と言われたりしたので、ここで「全然後悔してませんけど何か?」と答えてしまったのでは、私が強がっているような感じにも見えてしまうと思います。

しかし「全く後悔はしていない」というのが正直な気持ちです。売り言葉に買い言葉などの意地は一切なく、全く後悔していません。私は自衛隊を辞めてから、営業も兼ねた技術系の職に就きました。

心のどこかで「もう理不尽な目に遭いたくない!」という気持ちがあって自衛隊を辞めたのに、今度は理不尽なお客さんに悩まされたりして、悩みが根本的に解決してないと思った部分はあります。しかし、心から「こっちの世界の方が自分には向いている」と思っています。

ただし、予想通り手元に残るお金はかなり少なくなりましたし、休みの数も相当減りました。それに会社の上司・先輩社員も良い人ばかりではなく、中には「自衛隊の時にいたような嫌な先輩社員」もいたので、そういう意味では「こういうのはどこに行っても変わらないんだな」とも思いました。

それでも後悔していないのは「夜に1人で寝れる、綺麗なお風呂に入れる、地震があっても呼び出されない」などの人間らしい生活ができているからだと思います。

自衛隊を続けていくのにも才能が必要

自衛隊は良くも悪くも特殊な国家公務員

私は今でも「昔、自衛隊にいた」と周りの人に言うと「なんで辞めちゃったの?勿体無い」と言われることがあります。その時は「いやー、体質的にお酒が飲めなくて、このままだと命が危ないと思ったんで」と返すようにしていますが、これは半分は冗談で半分は本気です。

このブログでも「陸上自衛隊でやっていくのに1番必要な才能は『お酒が飲めること』である」と書いています。身体能力が高いとか、頭の回転が速いとか…そんなのどうだっていいんです。お酒が飲めれば何とかなります。そしてお酒が飲めるという才能も含め、自衛隊を続けていくのにも才能が必要なんじゃないかと痛感しました。

自衛隊で味わう理不尽はどっちが軽い重いではなく、一般社会で味わうそれとは種類が違います。私の場合は会社で嫌な先輩社員に嫌がらせをされようがパワハラをされようが、24時間一緒じゃなくてもいいという部分がこれ以上なく救いでした。

自衛隊ではプライベートも仕事のうちだったりしますし、やはり一般社会と比べると特殊な部分が大きく、向き不向きがあるように思います。

自分は自衛隊に向いていないかったと痛感

私は「弾の入っていない銃を持って、夜中に歩哨(見張りの練習のようなもの)をする」という行為に対して、心のどこかでバカバカしいと感じていました。言葉を選ばずに言うなら「中学生がやるサバゲーだって、もうちょっと本格的にやるっつーの」くらいの感じです。

何かあったら「有事の際にそんなことでどうする!」という恫喝をする割に、本気で有事の際に機能する部隊だとは微塵にも思っていませんでした。万が一戦争になって他国に攻め込まれたとしたら、弾薬を貰うために武器庫に並んでいる際中に爆弾かなんかで吹き飛ばされるんだろうなと。

これは向いてない奴の発想です。「くだらないし意味のないことはしたくない」と考える私のような人間には自衛隊は向いていません。例え弾倉が空でも、弾が入っているという引き締まった気持ちで訓練に臨める人。もしくは「これも仕事だ」と割り切れる人。そういう人でなければ一生続けていくことは無理じゃないかと思います。

私のような人間が長く自衛隊にいると、いわゆる「理不尽な先輩隊員」の代表的な存在になってしまうのでしょう。

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自衛隊を辞めようか悩んでいる人へ

自衛隊を辞めようか悩んでいる人へ

実際に辞めた人、1度辞めたけどまた戻ってきた人に話を聞く

私は6年間自衛官をやっていたので、新隊員同期の半分以上は既に辞めていました。その辞めた同期に「もし自衛隊に戻れるって言われたら戻ってくる?」と聞いたり、同期の中には「二度目の自衛隊人生(再入隊組、出戻り組)」という人もいたので、こういう人に話を聞きに行ったのを覚えています。

まぁ既に辞めた同期は「元から自衛隊を続ける気がなかった人が多かった」ということもあり、後悔していると言った人はほとんどいなかったわけですが…。しかし人生二度目の自衛隊への入隊を決めた同期の人の話は大変参考になりました。

やはり一度辞めた所にまた戻ってくるというのは、一般社会と自衛隊を見比べて「自衛隊の方がいい!」と思った人の行動でしょうから。もしあなたが自衛隊を辞めたい感情に悩んでいて、近くに出戻り隊員がいるなら相談してみることをおすすめします。

関連記事自衛隊に再入隊する!?|意外と多い出戻り組の実態を暴露する

先輩隊員が言う「シャバが辛い」って本当?

私が辞めると言った時、説得に来た上官や先輩隊員たちは「シャバは辛いぞ」と言ってきましたが、私は「ずっと自衛隊にしかいないあなたたちに何がわかるのですか?」という感情でいっぱいでした。特に私は2年遅れで自衛隊に入隊し、自分より年下の隊員に「シャバは辛いぞ」と言われるとは夢にも思ってもいなかったので。

入隊を決めた時から、既に辞める意志が固まっていた場合(任期付きと割り切って入隊していた場合)は話は別です。しかし「ずっと続けよう」と思っていた人間が辞める方向に傾き始めた時というのは、少なからず一時的な不満のようなものもあるのではないでしょうか?

それが自衛隊から離れることで解決する問題なのか、そして一時の感情ではないと言えるのか。このあたりを冷静に判断するためにも、実際に自分の知らない世界を経験している人から話を聞くことをおすすめします。

辞めてもどうにでもなる

多くの人は休みや貯金できる余裕は減ると思う

私は今でこそ陸上自衛官を尊敬しています。そして災害派遣等で現地に赴き、職務を遂行している自衛官の方々には頭が下がる思いです。もし現役の自衛官で辞めようかどうかを悩んでいるという人が私の身近にいたら「頑張れるようなら頑張ってみたら?」と言いたいというのが本音かもしれません。

やはり自衛隊はお給料も安定していますし、一般的なサラリーマンと比べると休みが非常に多いです。私は貰えるお給料こそ少しダウンで済んだという感じですが休みは大幅に減りましたし、貯金できる余裕は大幅に減りました(私は学も資格もなかったので参考になるかどうかは不明ですが)。

せっかく自衛隊に入って積み上げたものがあるなら、それを活かせる方向に持って行くことはできませんか?ちなみに自衛隊を辞めたからと言って自衛隊で積み上げたものが全くの無駄になるということはありませんし、辞めたってどうにでもなります

自衛隊のストレスは特殊で、向き不向きはあなたの想像以上に大きい

私のように自衛隊特有の部分が苦手でストレスを感じていたという人なら、給料が下がろうが休みが減ろうが大したことじゃないです(いや、大したことはあるけど)。

辞めた私が言うのもなんですが「辞めたってどうにでもなるんだから限界までトコトン頑張ってみて、それでもダメだと思ったら、後悔するかもしれないとか考えずにチャチャッと辞めちゃえば?」と思います。

たぶんそこまで踏みとどまろうとしてダメだったんなら、向いてなかったんだと思います。次は上を向いて進めばいいだけですから問題ないと思いますよ。学がなくて中卒扱いの私ですらどうにでもなっていますし、その時はその時でまた頑張りましょう。

一般の会社にも嫌な奴はいるし、先輩に怒られることが無くなるわけではありません。でも自衛隊のストレスは特殊で、向き・不向きは非常に大きいと思います。

自衛官の再就職について

例え私が26歳の時に自衛隊を辞めていなくても自衛官の定年は50代前半であり、どのみち就職活動はしなきゃいけないケースがほとんどです。言葉を選ばずにいうのであれば「自衛隊に30年も40年もいた奴が、50代半ばになって一般社会に出てきて何ができるの?」という時代が来ているかもしれません。

そうならないためにも人は常に成長する必要があるわけで…。私が一般社会に出て思ったのは「民間企業で働いている人の多くは『自分の会社は潰れないだろう』なんて微塵も思ってない人の方が多いのではないか?」という点です。

自衛隊にいながら常にストイックに学習を続けることは非常に難しいと思います。だってお給料は安定していますし、ボーナスも出るし、休みも多いんですから。

一方で私は、いつ会社が倒産したり自分自身がクビになってもいいように、自分の技術を磨いたり資格を取ったりしています。私は今30代半ばですが、20年後に自衛隊同期と就職試験で鉢合わせても絶対に負けないという意志で、自衛隊を辞めたその日から頑張っている次第です。

関連記事自衛隊から再就職した時の本音|陸上自衛官の再就職は厳しい?

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自衛隊を辞めて10年|今まで一度も後悔していない話 まとめ

まとめ
  • 私は自衛隊を辞めて10年以上が経った今でも、自衛隊を辞めたことを一度も後悔していない
  • 「自衛隊に入らなければ良かった」とも思ってないし「辞めて良かった」とも思っていない
  • 自衛隊の向き不向きは非常に大きい
  • 辞めてもどうにでもなるし、それで人生詰んだりすることは一切ない
  • 一時的な感情で辞めたりせず、冷静になってから考えてほしい

一般社会でヒーヒー言ってる人からしたら、自衛隊は「給料も安定してるし、休みも多くて羨ましい」と思う人も少なくないと思います。特にボーナスの時期になるとそういう声が出る傾向が強いです。

でも自衛隊はすごく特殊な職業なので、個人の努力で超えられる部分とそうでない部分が一般の会社に比べて大きいような気もします。私は「自衛隊をドロップアウトしてしまう→自分はダメな人間だ」って思っていましたが、想像以上に向き不向きの激しい職業だったなぁと痛感しました。

私も実際に自衛隊を辞めると決めた時は不安でしたし、辞めようか悩んだ時期も人並み以上にありました。そんな時は同期や先輩、なんなら後輩でもいいので「自分が素直に話を聞ける相手」に相談しましょう。

もしそういう人が周りにいないというのであれば、私で良ければ相談に乗るので気軽に運営ポリシーからメールください(力になれるかどうかは分かりませんが私なりに全力は出します)。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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