「陸曹は分からないことがあっても分からないとは言うな!」という価値観に思うこと

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。

私は陸士の頃から「陸曹になったら『分からない』という言葉を使ってはいけない」と言われてきました。そして陸曹になった時、後輩からの質問につい「分からない」と答えてしまい、先輩隊員に怒られてしまった経験があります。

個人的には陸曹なんてそんなに偉いもんだとは思ってないですし、単に試験に受かったかどうかってだけなので誰でも何回か挑戦してればそのうち合格もできますし、大した存在じゃないんです。

ただ全員が全員とは言わないまでも「陸曹は分からないことがあっても分からないとは言うな!」という考えを持った先輩隊員は非常に多かったので、今回はその価値観に思うことを書いていきたいと思います。

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「分からないという言葉を使うな!」とはどういうことか

ここでいう『分からないこと』と言うのは、日業業務に関することです。さすがに50過ぎの陸曹隊員を捕まえて「欅坂の〇〇ちゃんって可愛いと思いませんか?」って言ったところで、大半は「知らねー」と言われて終わりだと思います。

まぁそもそも50歳くらいにもなれば、自衛隊独自の妙な風習からは既に解放されているという隊員が多く、もはや変なプライドも持っていないことが多いですね。大体「陸曹は~」という無茶苦茶なことを言ってくるのは、陸曹になったばかりの熱い人間か、せいぜい30半ばくらいまでじゃないかと思います。

 

そして一般の人からしたら「分からないという言葉を使うな!」と言われたら「じゃあ分からないことを聞かれたらどうするの?」と思うんじゃないかと思います。

基本的には「分からないと答えることがないように普段から勉強しておけ」って意味なのですが、こんなことができるスーパーマンは陸曹程度でくすぶってないでしょうし、もっと言えば「陸上自衛隊なんかに入ってねーよバカヤロー」です。

 

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「分からない」という言葉を使わないとどうなるか

私に「陸曹は分からないことがあっても分からないとは言うな!」と教育していた隊員は、じゃあ自分が答えられないような質問をされた時にどうやって答えてくるのかなぁと思ったのですが、なんとなく歯切れの悪い言葉でその場は上手く誤魔化し、あとから調べてちゃんとした答えを用意してくれました。

…用意してくれた?用意してきた?

まぁその辺りのニュアンスはここでは言及しないことにしますが、いずれにしても「最初は誤魔化して、あとから調べて正しい情報を教えてくれる」という感じでしたね。

 

あとでちゃんとした答えを用意してくれるというあたりが、いわゆる人間性に問題のある先輩隊員だったとは微塵にも思いませんし、それなりに責任感のある先輩隊員だったんだろうなぁとは思います。

しかし質問をする後輩隊員からすると、分からないことは分からないと言ってほしいんです。

最初に質問して返ってきた答えが「これはダミーなのかな?それともインプットしても問題のないアンサーなのかな?」という部分で無駄に悩むのがアホらしいというか…(質問しといてアレですが)。

 

普通なら質問した段階で答えが返って来れば、それが正しい答えだと思ってインプットするという人が多いと思います。

それが覚えた後で「ごめんごめん、さっきのアレちょっと違ったわ!」と言われたら、情報を入れ直すということが必要になり、人によっては後で思い出した時に「あれ?どっちが正しい情報だっけ?」ってなってしまうような気が。

 

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「分からないのまま終わらせるな!」なら理解できる

個人的には「陸曹は分からないことがあっても分からないとは言うな!」というよりも、どちらかと言えば「陸曹は分からなことがあっても分からないのまま終わらせるな!」と言えば良いのではないかとずっと思っていました。

一旦は「あー、その着眼は持ったことがなかった/いやー、ちょっと勉強不足で分からないから、あとで調べて教えるね」が1番スッキリするように思うんです。

 

「後で調べて教えるね」と言ってしまうことで、逆に後輩隊員が申し訳なく感じてしまうような空気感があるのであれば、そこはフォローしなくても後で勝手に調べて「そういえばこの前の…」という感じで答えてあげればいいのではないかと思います。

後輩隊員だって「その着眼はなかった」と言われたら、多少は嬉しい気持ちがあると思うんです。少なくとも「陸曹にもなって、そんなことも知らないのかコイツは」とは思わないでしょう。

 

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無駄にプライドの高い隊員が多い

私が陸上自衛隊に在籍していた頃、無駄にプライドが高い隊員が多いなと感じていました。

そういう人も同期や先輩に対しては素直に甘えられるのかもしれませんが、後輩に対して物事を聞けないというか、それこそ分からないと言えなかったり…。

特に私が在籍していた部隊というのが通信関連の部隊で、通信機材1つの扱いに関しても分からない事って結構多いんですよ。特に障害時の対策なんかは実際に対応した経験がないと分からないことも本当に多いと思います。

 

そういう時は、実際に勤務対応した後輩隊員に質問するのだって悪くないはずです。しかし私の部隊ではそれも許されていなかったので、自分のためにも隊のためにもならないんじゃないかと思っていました。

もちろん人にもよるんでしょうが、ある程度の年齢に差し掛かったらそういう考えは徐々に緩くなってくる傾向にあるので、価値観の違いなんでしょうか…。いずれにしても勿体無いように思います。

 

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最後に

つらつらと書いてきましたが、もちろん色んな部隊があって色んな隊員がいますから、全員が全員こうであるというわけではありません。

特に私が所属していた部隊は、陸上自衛隊の中では特殊な方だったような気もするので、ゴリゴリの体育会系という感じでもなく陰湿な雰囲気が強かったかもしれませんし…。

 

いずれにしても、陸上自衛隊に何年か在籍している若い隊員は「〇〇すればいいのに」と思う部分が結構あると思います。先輩隊員たちも最初はそう思っていたのに、気付いたら染まっていたというパターンも少なくないはずです。

私は途中で逃げ出してしまいましたが、陸上自衛隊の中でも「おかしいことはおかしいと言える風潮」が強くなって欲しいと心から願っています。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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