自衛隊で取れる免許・資格|無料でスキルアップが可能

自衛隊で取れる免許・資格 無料でスキルアップが可能

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。この記事では以下のようなことが分かります。

  • 自衛隊で取れる免許・資格の種類
  • 優先的に資格を取らせてもらうにはどうすれば良いか
  • 資格取得に失敗した時のリスクやペナルティ
  • 車の運転免許に関する内部事情
  • 私自身が自衛隊で取らせてもらった資格(実体験)

私は自衛隊に入隊する前、広報官の人から「自衛隊に残れば一生安泰だし、辞めることになっても自衛隊にいる間に資格がいっぱい取れるからその後の就職に有利だ!」と言われました。

そして実際に6年間の自衛隊生活を経て、国家資格も幾つか取得したのですが…。個人的には「職務で資格が取れるかどうかは配属先の部隊に大きく左右されるので、そこに振り回されずに資格を取りたければ個人の努力が必要不可欠」だと強く感じました。

もし「自衛隊に入ったら積極的に資格を取らせてもらえる」という理由で入隊を決意するという人は、ちょっとだけ注意が必要かもしれません。そこで今回は、私の実体験を踏まえて「陸上自衛隊入隊後に取れる資格についての内部事情」をご紹介したいと思います。

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自衛隊で取得できる免許の種類

【車両関係】
●自動車整備士(1〜3級)
●大型自動車運転免許(1種)
(自衛隊以外の大型自動車運転には限定解除が必要)
●大型特殊運転免許
●けん引免許

【船舶関係】
●小型船舶操縦士
●潜水士

【航空関係】
●航空管制官
●航空無線通信士

【医療関係】
●救急救命士
●准看護師
●臨床検査技師
●診療放射線技師

【その他】
●危険物取扱者(乙種第4種)
●公害防止管理者(第1〜4種)
●ガス溶接(アーク溶接)技術者資格2級ボイラー技士
●電気工事士
●パソコン検定(3・4級)
●英語検定(2・3・4級)
●ワープロ検定(3・4級)
●情報処理(1・2級)
●調理師免許
●栄養士

取得機会のある資格について

自衛隊で「取得機会のある資格」として公表されているのは上記の資格です。当然ながら所属部隊によって必要な資格が異なりますし、これら以外の資格を取らせてもらえることも多いので、この一覧はあくまで自衛隊で取得できる資格・免許の一部だと思っておいた方がいいでしょう。

自衛隊では業務に必要な国家資格は、通常勤務の時間を使って教育してくれたりもしますし、受験費用も出してくれたりします。数十年前は「運転免許を取る目的で自衛隊に入隊し、免許を取ったら翌年に辞める」みたいな人も少なかったようです。

自衛隊は様々な業務を行うため、特殊な資格が必要になるケースも少なくありません。まして日常業務で必要な物となれば、ちゃんとした教育期間を設けてもらって勉強しながらお給料まで貰えるという展開すらあります。

運転免許なら幅広い舞台で取得できるチャンスがあると思いますが、小型船舶操縦士の資格が取得したいのに陸上自衛隊に入隊したのでは難しいでしょう。入隊した自衛隊の中でも更に所属部隊によって大きく変わりますから、どうしても取得したい資格がある場合は早い段階で熱意をアピールすることが重要です。

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優先的に資格を取らせてもらうにはどうすれば良いか

優先的に資格を取らせてもらうにはどうすれば良いか

入隊の段階でアピールするくらいがベスト

あくまで私個人の見解ですが、もしどうしても取得したい資格・免許があるなら「入隊時にもうアピールする」くらいがちょうどいいと思います。普通だと「そこまでガツガツしてたら生意気に思われないかな?」とか感じるかもしれませんが、自衛隊の場合は熱意として受け取ってもらえるケースが多いような場面が多い気がしました。

現に私は陸上自衛隊に入隊した際に通信部隊への配属を希望し、その希望をちゃんと叶えてもらっています。適性がなければそれも難しいんでしょうが、車の運転免許に関しても声を上げた隊員の優先度は高かったです。

辞めるのが分かっている人を優先する部隊も少なくない

自衛隊員には任期制の隊員がいて、2年・4年・6年という決まった期間で辞める隊員も少なくありません。普通は仕事で資格を取らせるわけですから「優先すべきは自衛隊に残る隊員」であることは間違いないんですが、意外と「あいつが辞める前に取らせてやるか」みたいな風潮が強かったです。

もちろんこれも部隊の雰囲気や考え方に左右されるんだろうとは思います。ただ、運転免許なんかの場合だと運転できる人間がある程度揃っているのであれば、辞める前の手土産みたいな感じで免許を取得させてあげるケースも多かったので、やはり熱烈アピールしていくのが有効と言えるでしょう。

事前にどこの部隊で何の資格を取らせてもらえるか調べるのが〇

私は一覧表にない資格をいくつか取らせてもらったので、もし欲しい資格があるんだとすれば入隊前に広報官に聞いてみるのも有効だと思います。広報官はとにかく一人でも多くの入隊希望者を集めたいので、必死になって探してくれるでしょう(そして多分うそは言わないと思います…多分)。

例えば電気工事士が取れるなら「電験三種」なんかも取らせてもらえそうな気がしませんか?ちなみに私が所属していた部隊では、例外的に電気工事士はOKをもらったものの電験三種はだめでした。

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資格取得に失敗した時のリスクやペナルティ

資格取得に失敗した時のリスクやペナルティ

資格試験に落ちると死ぬほど肩身が狭くなる

自衛隊で業務に必要な資格を取らせてもらう場合、時間もお金も掛けてもらった上で勉強をさせてもらえます。当然、普段と一緒でお給料も発生しますし、このお給料は税金です。

というわけで、資格取得のために色んな面でお膳立てしてもらっておいて試験に落ちるようなことがあれば、死ぬほど肩身が狭くなります。さすがに目に見えるような形でペナルティを与えられるってことは無いにしても、資格を取るまでネチネチ言われたりするのは覚悟しておいた方がいいです。

多くの場合でそこまで難しくない資格試験がほとんど

前項ではちょっと脅かすような文章を書きましたが、そもそも自衛隊で日常業務で必要だから取れって言われるような資格に、そんなに難しいものがあってたまるかって話です。

これまでに先輩隊員たちも取ってきてるわけですから、ちゃんとそれなりのカリキュラムを組んで実施しているはずで、そこまで心配に考える必要はありません。というか、ここで心配に感じるような人ならちゃんと勉強するはずで、普通に合格するんじゃないかと思います。

私の部隊には危機感の無い隊員で落ちた奴が何人かいましたが、多くは二回目の試験でちゃんと合格していました。ちゃんと危機感を持って勉強していた隊員は全員合格していたので、この辺りは特に心配は要らないんじゃないかと。

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車の運転免許に関する内部事情

自衛隊で車の運転免許は高確率で取得可能

運転免許の取得目的で入隊する人も珍しくない

私が住んでいる地域は非常に田舎で、どこに行くにも車が無ければ不便をしてしまう地域なので、高校在学中に免許を取得する人が非常に多いです。そんな中、私が自衛隊に入隊した時の同期隊員は約9割が運転免許を取得しておらず、入隊後に自衛隊で取得しようと目論んでいました。

都会に住んでいる人は「車=贅沢品」というイメージがあるのかもしれませんが、田舎に住んでいるという人にとって運転免許の有無は死活問題だと思います。そして免許を取るために通う自動車学校の時点で、既に30万円近いお金が掛かってしまうんですよね。

しかし学生時代はお金がありませんし、社会人になったらお金はあっても今度は時間に悩まされてしまうでしょう。陸上自衛隊では日常業務で運転免許の取得ができるので、それ目当てで入隊してくる人もいるくらいです。

自衛隊専用の自動車学校のような所で訓練する

もしかすると「一般の自動車学校に通わせてもらえる」と勘違いされる方がいるかもしれませんので…。自衛隊には自衛隊の中に自動車学校のような所(自衛隊自動車教習所、略して自教)があり、そこで運転免許を取得することになります。

教官も自衛官です。一部「厳しい」という情報が流れていますが、私の時は全く厳しいと思いませんでした。自教に通う隊員同士の間にも上下関係はありますが、普段の部隊での上下関係とはまた種類が違って「自教同期」みたいになるので、割と和気あいあいとやっていた記憶があります。

私の場合は20歳の時に入隊し、普通に運転免許を所有している状態で自教に行きました。どっちが楽しかったかと言われればお金を払って通った一般の自動車学校の方が楽しかったですが、自教は「お給料をもらいながら運転免許を取らせてもらえる」という部分に多大なメリットがあるので、ありがたいという感情以外の何物もないです。

入隊前に普通運転免許を取得していたとしても、自衛隊車両を運転するために自教に通う必要があります。

運転免許取得のタイミングについて

運転免許取得のタイミングについて

取得できるタイミングは部隊の方針によって大きく左右される

私が所属していた部隊では、基本的には陸曹試験に受かった人間が優先的に行くことができ、その該当者がいなかったり枠が余ったりしたときに、古株の陸士長に権利が与えられるという感じでした。

私は割と大きい駐屯地に居て比較的忙しい部隊でしたので、どちらかというと特殊な例かもしれません。それこそ私の地元(規模が小さい部隊)に勤務していた同期は、ガンガン運転免許を取らせてもらっていました。なので、こればかりは部隊によって大きく変わると思います。

どちらかというと「小規模な駐屯地の方が行かせてもらえるのかなぁ」という印象です。私が所属していた部隊では、任期付き隊員で1任期(入隊から2年間)の間に自教に行かせてもらった人はほとんどいなかったですし…。まぁ任期満了で貰ったお金で一般の自動車学校に免許を取りに行っても、莫大なおつりがくると思いますが。

関連記事陸上自衛隊の一般的な入隊区分の違い|一般曹候補生or任期制隊員どっちがおすすめ?

車両を頻繁に使う部隊ほど免許の取得も早い

陸上自衛隊では教育期間中にある程度の希望は取られますが、適正なども兼ね合いもあって何処の部隊に配属されるかはタイミングと運です。そして当然、車両を使う部隊の方が免許の取得も早いと思います。

例えば私の同期で偵察部隊に行った人がいるのですが、彼は職務で必要な偵察用オートバイに乗るために早い段階で自教に行っていました(まぁこのケースは前期教育中から班長にそれをアピールしていて、それを汲んでもらった形にはなりますが)。

私が所属していた部隊では年に数回ある演習の時に4tトラックを数台出すくらいで、あとは定期的に演習所の点検などに行くくらいでしたので、あまり必要ないと言えば必要なかったため後回しにされていたのかもしれません。このあたりも運だと思います(同じ中隊でも規模が小さい小隊に所属しているほど自教に行かせてもらえるというイメージ)。

大型運転免許が取りたいという人は注意!

自衛隊に勤めた後で運送業に就きたいという人なんかは、自衛隊に入隊して大型免許を取らせてもらおうと考えている人もいることでしょう。結論から言うと陸上自衛隊で取らせてもらえる大型運転免許は、自衛隊車両に限定されるので注意が必要です。

あくまで自衛隊の大型トラックを運転できるようになるだけで、、自衛隊をやめた後に一般道で大型トラックを運転するにはちゃんとした免許を取り直す必要があります。

もちろん自衛隊限定の大型免許があれば「運転する技量はある」と見られるため、自動車教習所に通うにしてもゼロから通う人よりは優遇されますし、決して無駄にはなりません。ただし自衛隊で大型免許を取ったからと言って、それをそのまま一般社会で使用できるとはならないので注意しましょう。

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私の実体験、実際に取らせてもらった資格の紹介

私が所属していた通信部隊では「無線」に関する資格が必須

第一級陸上特殊無線技士を取るための教育

私は通信部隊に所属していたので、無線に関する資格が必須でした。資格名で言うと「第一級陸上特殊無線技士」という資格です。一級と言われると構えてしまいますが、難易度的には難しいということはなく、一般的にそこそこ勉強ができる方であれば難なく合格できる程度の資格です。

これを取得するために資格試験日の1ヶ月前から教育に行かせてもらい、勤務中はずっと勉強という期間がありました。一般の会社に勤めている人からすると目から鱗が落ちるかと思いますが、勉強してお金が貰えるという非常にありがたい期間です。

ちょっと記憶が定かではありませんが、資格取得に関わる費用も出してもらったような…。私の記憶では「もし落ちたらあとは自力で何とかしろよ!自分で金出して試験受けろよ!」みたいに言われた記憶があります。

他に取らせてもらった資格(+独学で取った資格)

  • 第一級陸上無線技術士→業務日報に名前を書くため
  • 大型自動車運転免許→車両を運転するため
  • 基本情報技術者→情報保全の取り組みのため
  • 電気工事士2級→発電機の取り扱いのため
  • 危険物取扱者 乙4→発電機の燃料管理のため
  • 日商簿記2級、FP2級、ボイラー技士2級→空いた時間を使って取得

太文字の3つの資格は実際に取らせてもらいました。他は「教育期間とかは設けないけど取ってくんね?」みたいに言われたやつです。私にとって第一級陸上無線技術士は結構難しくて落ちるのを覚悟していましたが、独学で取ることは絶対になかった資格なので今思えば有難かったと思います。

ちなみに自衛隊は時間が結構あって、私の場合は夜勤の時間に通信障害とかがなければ勉強し放題だったのでかなり恵まれた境遇にいました。やる気さえあれば資格取り放題なんで、興味がある人は陸上自衛隊の通信部隊を希望してみてください。

サラリーマンをやりながらよりも資格取得は目指しやすい

私は今サラリーマンをやっていますが、今の状況で難易度の高い資格取得を目指そうと思ったら眩暈がしてきます。一方で自衛隊にいるうちは時間が豊富なので、それを資格試験に向ければ効率の良い勉強も可能です。

勉強するかどうかは結局本人の気持ち次第なので、色んな誘惑に勝ちながらも資格の取得を目指すことができるという人なら、非常に有意義な生活ができるでしょう(そういう人はサラリーマンをしながらでも資格取得ができると思いますが…)。

自分で勉強しながら資格を取るなら可能性は無限大!

例え教育期間が設けられなくても、よほどのことが無ければ毎日18時には仕事が終わり、食事やお風呂を済ませて次の日の準備を済ませれば20時です。そこから消灯の23時までは3時間あります。ここを勉強に使えるのであれば、大抵の資格取得はできるでしょう。

私はやることがなかったので暇つぶし感覚で資格に挑戦していましたが、日商簿記、FPなどの自衛隊にあまり関係のない資格も取りました。理由として「定年間近の先輩隊員が、なかなか就職が決まらないという現状を見て、ちょっとだけ危機感を感じた」という部分もあったように思います。

一般の会社に勤めていると20時に家に帰れることはあっても、そこから自炊したりお風呂に入ったりとなることが多いでしょうから、毎日数時間の勉強時間を作るということは難しいのではないでしょうか。そう考えたら自衛隊では、資格取得を目指すのには非常に良い環境が揃っていると言えるのかもしれません。

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自衛隊で取れる免許・資格 まとめ

まとめ
  • 運転免許は大型も可能な中型免許が取れる(ただし大型は自衛隊車両限定)
  • 所属部隊によって取得免許の種類が変わるため、希望は早い段階で伝えるのが〇
  • やる気があるなら資格取得に使える時間も豊富にあるのが自衛隊

個人的には普通運転免許なら元から持っていましたし、自衛隊で取らせてもらった資格のおかげでその後の就職活動がそこまで有利になったかって部分は不明ですが、就職活動では勤勉さの裏付けになった感はあったと思います(ぶっちゃけ資格よりも実務経験の方が重視されるような気も)。

いずれにしても今は世の中が70歳まで現役にしようという流れで動いているので、自衛隊の定年が55歳(私が在籍していた頃は55歳だったと記憶しています)である以上、退官してから15年は一般社会で働かなければならない時代が迫っています。

少しでもやる気のある人なら自衛隊の環境は非常に恵まれていると思うので、自衛隊に入隊して資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

元陸上自衛官のレトロ軍曹です。20歳の頃に入隊し、自衛隊には6年間在籍していました。仲の良い現役自衛官と今でも交流があるので、定期的に取材みたいなことをしつつ、自衛官を目指したいという人に向けて「もとじブログ」を運営しています。

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